体調が芳しくない。
鼻水がずるずる出るし、喉の奥が少し痛い。
これは、風邪の引き始めだろう。
本当なら、医者に行って、安静にするのが正解だろう。
しかし、不幸中の幸いなのか、鼻と喉以外の身体から、悲痛な訴えはない。
休むには微妙な感じだ。
もっと重篤なら考えるまでもなく、休むのに。
風邪は移されたくないが、休まれると疎まれる。
風邪を引かないが最上だが、油断しない人生は荷が重い。
とかく、迷惑にならないよう自己申告すべきか…
悩ましい、こういう時、子どもに戻りたい。
子どもならば、責任だとか規律だとか、大人に丸投げできる。
いや、子どもでも、責任や規律を重視する子もいるか。
熱でどうにかなってしまった、とそっぽを向く。
肩甲骨や、背骨、大腿骨の普段は気にしない節々がじんわりと感じる。
それは、節々に薄っぺらい手で触られているような感じだ。
無遠慮に、無言で、私の骨の節々をべっとりと触っている。
その手から発せられる熱、のようなものが、私を苛立たせる。
動くのにまとわりつく手のお陰で、私の動作に幾分かのタイムロスを起こす。
この手の正体は、本当は分かっている。
それは、私の意識、私自身だ。
身体の調子がおかしいことを、どうにか私に伝えようと内側からメッセージを送っているのだ。
しかし、私は、節々に薄っぺらい手をまとわりつかせたまま、仕事をする。
強引に動かして、軋ませながら、身体を動かす。
内なる声に耳を貸さず、目を背け、すぐ詰まる鼻をすする。
私だって無茶をしたくない。
したくないが、やらなければ会社に迷惑だ。
誰か、私の代わりに働いてくれないだろうか?
そんな無体、無益なことを奥歯に噛み殺せずに、口からまろび出る。
体調が芳しくない。
本当に、体調が芳しくない。
今も、節々に薄っぺらい手がまとわりつく。
分かっている、分かっているから、見逃してくれ。
葛藤、悶絶、社会人。
願わくば、寝て起きたら、病魔よ退散しておくれ。
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