田舎の夜は、早い。
駅の街灯は静かに灯り、通りはひっそりとしている。
私は、東京から帰省していたSくんを、駅前の居酒屋へ誘った。
Sくんは二つ返事で応じ、20時頃、2人は居酒屋の前へ来た。
赤提灯に赤く照らされた居酒屋に、「営業中」と独特の文字で書かれた木札がぶら下がっている。
普段お酒を飲まない私は、縄暖簾をくぐる手が、ほんの僅かに強張った。
店の中は、がらんとしていて、お客さんは1人だけだった。
私とSくんは、玄関近くの席にゆっくり座り、ビールと枝豆を頼んだ。
大したことは話さなかった。
お互いの仕事のこと、これからのこと、本当に些細なことばかりを話した。
Sくんは熱燗を頼んで、顔を赤くしていた。
私も梅酒のロックと芋焼酎のロックを頼んで、陽気に呑んだ。
大したことではないが、楽しかった。
21時45分に居酒屋を出た。
閉店が22時だからだ。
3杯では、酔うに酔えないが、周りの店も同じ時間に閉める。
田舎の夜は、本当に早い。
私は渋々といった風情で、Sくんとタクシーに乗って家路に着いた。
予め敷いていた布団に飛び込んで、ゆっくりと意識を閉じていく。
微睡む幸せを噛み締めながら。
落ちはない、眠りには落ちたが。
次は、もっと呑みたい、正月明けかな。