雨が降っている。
雨雫が松葉の先に付き、時折、ぽたりと落ちる。
松葉の先から離れたその一瞬、宙に浮く雨雫を眺めるのは楽しい。
長野県は山の国だ。
日本の国土の約70%が山岳地帯だから、他県にも山はある。
それでも、この土地こそ山の国と自負している。
私が住んでいる安曇野市も名立たる山々に囲まれている。
この安曇野市は、よく晴れる。
囲う山々に阻まれて、雲が滞ってしまうからだ。
所によっては、豪雪になる地域もある。
理由は同じで、山に阻まれて、雪を降らす雲が留まり続けるからだ。
雨一つ、雪一つとて、山の影響は大きい。
故に雨が降ると私は嬉しく感じる。
雨音は、静かに反響し、清廉さを纏った空気が充ちていく。
目を閉じれば、ぽたりと松葉の音がする。
質量のある雨雫は遥か上空から落ちてくるが、肌に当たっても痛くはない。
雹に成れば、時に窓ガラスさえひび割るほどの威力なのに、雨雫だと痛くない。
それは遥か上空から落ちてくる雨粒は空気抵抗を受け、やがてその空気抵抗が重力と釣り合い、重さがなくなるから。
晴れている時の雲は白いのに、雨を降らす雲は黒い。
雲が黒く見えるのは、日の光さえ遮るほど分厚いから。
入道雲は白く見えるが、その真下は同じように黒く見えるだろう。
科学の徒である私は、雨の秘密が知れるのは面白い。
しかし、本当に雨の秘密に辿り着けているだろうか?
秘密は暴かれなければ、誰にも知られることはないのだから。
ぽたりぽたりと雨音が強くなっていく。
それが祭り囃子の笛太鼓に聞こえる、と誰かが言っていた。
先程の静けさから、今度は賑やかな雰囲気と変わった。
あめあめふれふれかあさんが、じゃのめでおむかえうれしいな。
蛇の目は傘の柄のことで、傘を広げると同心円が描かれている。
その輪っかをヘビの目に見えることから名付けられた。
相合傘を描かれて、溜息が零れる放課後の教室はどうだろうか。
相合傘は「相合い」は共有することを意味する。
江戸時代の共有文化から傘もそうした使い方をしていたようだが、男女を入れた落書きも江戸時代からあるようだ。
傘の中で聞く雨音が一番音が綺麗、と何処かで聞いた気がする。
理由は…忘れてしまった。
気付けば、松葉の雨雫は、もうおしまいか。
耳にスズメが飛び出す音を聞きながら、投稿する。