上田から松本に帰るのに、下道を選んだ場合。
つづら折りの山道を通ることになる。
二車線のから真ん中の白線が消え、カーブは谷底へ蹴落とそうとする悪意があるのではないかと錯覚するくらいに曲がりきった道を走ることになる。
高速道路は料金を取られるが、山越えのことを考えれば、安全な道だ。
下道での山越えは、変な話、よっぽどの変わり者か、事情を抱えた訳ありか、何も知らずに迷い込んだ人間かくらい選択肢として最悪なものだ。
夜ともなれば、より視界が狭くなり、選択肢から除外した方がある意味、健全だ。
そんな私は山越えは好きだったりする。
高速道路ではあれだけ自動車が走っているのに、下道では中々出くわすことはない。
そんな道をひたすらに、曲がり続けて走るのは、スリルがある。
日常にはない、非現実感が山道にはある。
横を見るのも怖かったりする。何か得体の知れないモノがいそうな気配がするからだ。
30分ほど前を行く自動車とも、すれ違う自動車とも会わないと、この道は本当に正しい道なのか、不安になる。
そうした道をひた走って、目の前に、軽自動車を見付けると、ほっとする。
それが初心者マークを貼ってあると、にやつきが止まらなくなる。
目の前の自動車はとろとろと走る、当然だ、不慣れな人間なら山道は未知過ぎる。
初心者マークは斜めに貼られており、それが申し訳無さそうに頭を下げているようにさえ感じる。
目の前の自動車の運転手は気が気じゃなかったろう。
バックミラーににやにやしながら追随する男が映っていたら、さぞ怖いだろう。
耐えかねたのか、道幅が広がったところで、道を譲られた。
私は追い越し、サンキュウハザードをして、颯爽と走った。
そうして、他の自動車に出会う、二車線の普通の道になるまで、私は再び一人で走った。
最近あった、下道でのこと。
あの、初心者マークの彼らは、無事、山道を越えられただろうか?
選択肢を間違えた彼らに、このことを教訓になれば良いと変わり者は勝手に願う。
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