出し抜きたまごが食べたい。
鼻をかすめる油揚げの匂いに、腹の虫が喚き騒ぐ。
腹の虫が騒ぐせいで、脳の中で「何を食べたいか会議」が始まる。
その一番目に、あのふわっとした食感が候補に上がった。
とかく、何か、食べたい。
「出し抜きたまご」とは、何だ?
出しを抜いたら、パサパサにならないか?
それとも、鰹や昆布の出しをこっそり入れて、他のたまご料理を出し抜くことか?
いや、違う、そういうことじゃない。
あの、たまごの、巻いた食べ物。
「出し「何とか」たまご」の、あの食べ物だ。
名前が出て来ない、「出し」の次は、何だったか?
出し…出し…出しだしたまご?
いや、何の郷土料理だ、聞いたこともないぞ。
それとも若者言葉の類いか?「~だし」の語尾に付ける感覚か?
「出しだしたまご、マジヤバい」、「それな」、と会話がそこかしこの大学構内で…
いや、どれだよ?どこにもないよ、出しだしたまごなんて。
そも、「出し「何とか」たまご」の「何とか」の部分はいらなかったか?
出したまご。
やはり、違う。
もしあったとしても、たまご料理に違いないけど、作り方がきっと違う。
見た目が、多分、汁物。
私が食べたいのは、ふわっとした方だ。
いや、丁寧に言えば、ふわっとするか?
お出したまご。
違う。
さっきの汁物が上品な感じになっただけだ。
丁寧に言えば良いってもんじゃない、アホか、私。
でも、ふんわりとした味わいの汁物も、温まって良い。
お出し。
たまご、何処行った?
お出し、美味いけど。
もう、お出しで良い気がして来たけど。
お弟子。
語感が似てるな、と。
私が師匠?怠け術なら存分に教えるけど?
…いや、もう言葉遊びになっちゃっているな。
初心に帰ろう、そうしよう。
私は、ふわっとしたたまご料理が食べたい訳だ。
その名前が出て来ない。
なら、Google先生に聞けば良いではないか。
適当な言葉を検索窓に入れて、画像を探す。
………
あった。
「だし巻き玉子」
そう、これ!私はだし巻き玉子が食べたい。
はあ、スッキリしたら、腹の虫が早くしろと急き立て始めた。
仕事が終わったら、玉子でも買おうか、検討してみることにして、腹の虫をなだめるために、缶コーヒーでご機嫌を窺う。
所で、どなたか、出し抜きたまごを作ってはくれないだろうか?
と、ちょっとした戯言をぽつりと残す。
投稿します。