マッサージチェアを母の実家に輸送する。
古びた、埃を被った緑色のその椅子は、母の両親が使う手筈になっている。
誰が輸送するのか、それは夜勤明けの私だ。
えっちらおっちら自動車にマッサージチェアを詰め込む。
後部座席は倒してあるにも関わらず、マッサージチェアは目一杯、後ろの空間を圧迫する。
ふと、道路交通法に違反しないか、妙な不安が過る。
母の両親は、母の生家に現在も住んでいる。
このマッサージチェアを高速道路で1時間かけて運ぶ訳だ。
そんな日の朝に、水が多く含む重い雪が降る災難に見舞われる。
私が一体何をしたのか、と考えて、思い当たる節が閻魔帳にずらりの書き連ねるくらいにはある。
仕方ない、これも日頃の行いの報いだ、と諦める。
むしろ、3月の雪の日に母の実家にマッサージチェアを運ぶ、ネタの一つになりそうな気がする。
兎角、安全運転で向かう。
絶対に、事故だけは起こさないようにする。
こう書くとバットフラグを立てているような気がするが、手で頭の前を軽く振って悪い想像をかき散らす。
それにしても、我が実家の物が大分減ってきている。
世の流れに沿って、断捨離でもしているのだろうか?
いや、単純にこれからの生活に不必要だから捨てているだけだろう。
祖母や祖父はこのマッサージチェアを使ってくれるだろうか?
このまま我が家に置いて埃を被り続けるよりは雲泥の差だろう。
マッサージチェアの未来が、祖母祖父の長寿の一助をしていることを願う。
そろそろ、出かける時間だ。
先程よりは、幸か不幸か、雪も融けている。
何くそ、負けてなるものか、かかってこい、ゆっくりとな!
では、輸送の業務を遂行する、オーバー。