昨日、母の実家に行った。
フキノトウの天ぷらのあるテーブルで昼食をし、居間でひとっきら休んだ。
その時に、私と母と祖母で雑談をした。
他愛のない話を変わり変わりして、何となしに私は両親の将来のことを言った。
私の両親は二人とも片足がないので、足腰が弱って車椅子になったら、今の家のバリアフリーはどうするのか?という話だ。
他愛がないので益のある話にはならなかったが、ふと、祖母がぽつぽつと言葉を溢した。
「私は生きていて後悔はないけれども、母さんに対しては、後悔の後悔の後悔くらいある」
「私がちゃんと見てなかったから、(忙しくて)放ってしまった。(年の近い兄さんが居たから)見てなくて良いって思ってた」
「そのことは書いてあるから、(母に向かって)私が死んだら、読んでくれ」
母の片足を失ったときの話だろう。
私にとって母に片足がないのは当たり前なので、どうして片足がないのかの詳細は知らない。
だから、断片で聞いたこの話も、他愛のない話として聞いた。
母は祖母が手記にして残していることを初めて聞いた、と実家に帰ってからぽつりと言った。
祖母が亡くなった時、母の手に渡るであろう手記には何が書かれているのだろうか?
半世紀ほど昔の出来事を書いた手記を私が読むことは、恐らくない。
母は冗談めかして、「私も書き残すから、後で読んでね」などと笑って言った。
私は、「勘弁してくれ」と笑って答えた。
もし、母に後悔があったとしても、気にしなくて良いという想いは、胸に仕舞っておく。