今週のお題「あの人へラブレター」
今週のお題が、ラブレターとある。
5月23日が「こ、(い)、ふ、み」となるからだそうだ。
鍵のかかったドアを斧を振り下ろしてこじ開けるような、強引さを感じる。
蔑ろにされた「い」の気持ちをもっと考えて欲しい。
そして、私が答えるお題でもなかろう。
想定される、「あの人」がいないのだから。
未だ、恋を知らない、おっさんだ。
中学の時分には、同級生の女子に「愛って何?」と真顔で聞いていた。
恋とか、愛とか、私には判然としない。
少女漫画やラブコメ漫画のイチャラブで私には十分なのだ。
そうは言っても、誰かしらに宛てて、何か書くか。
こちらで勝手に想定しておこう。
あちらが読むことは、きっとないだろう。
適当に書き進める。
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親愛なる悪友へ。
田畑に水が張られ、畦に草花が生い茂り、山々の緑はより一層色濃くなる季節、いかがお過ごしでしょうか?
私は毎日、油揚げの油にまみれて、油臭くなっています。
多少は大人に成れたと、勘違いしないように日々を過ごしています。
さて、恋文、というと些か恥ずかしいのですが、私はあなたが好きでした。
ただ、その好きは「Like」でもなければ、「Love」でもありません。
言葉にすると、「大切な人」だった、となるのでしょうか?
そんなことを聞かれても困りますね。
中学の何時だったか、あなたに誘われてボランティア活動をし始めたのは、あなたに近付きたかった、なんて気持ち悪いですね。
今考えれば、異性に良い格好を見せたい、見栄のようなものでした。
その当時は、それほど深く考えていませんでしたが、私はあなたが好きでした。
それでも、あなたにとって、私はその他大勢の1人だったでしょう。
そして、私はそれほどまで固執するような人間でもありませんでした。
それでも、中学を卒業してからも、何となく付き合いが続きましたね。
その間に、幾人もの人と付き合ったり、別れたりしましたね。
そして、私はそれをただ、幸せになって欲しいな、と漠然と考えていました。
私は、ただ、「大切な人」であるあなたが幸せであれば、それで良かったのです。
月日が流れて、遂に愛する人を見付け、結婚しましたね。
その頃には、大分、お互いに距離ができていましたが、それでも、偶に連絡を寄越してくれましたね。
コミュ障な私には、その小さな一報で十分でした。
ただ、あなたが結婚する、と聞いたときは、遂にか、と妙な感慨を覚えたものです。
寂しい、とはやはり違うのですが、その時になって、多分、失恋したのでしょう。
可笑しいですね、恋をする前に恋を失うなんて。
行き違いがあったとは考えません。
私はあの時から、今でも、あなたが幸せなら、それで良いのです。
何を以て幸せか、なんて、あなたが決められれば、それで良いのです。
お子さん、可愛いですね。
落ち着いたら、会おう、と言ってくれましたね。
私は、それで、十分、幸せです。
これからも、大変なことがあるでしょう。
思いがけない、嫌なこともあるでしょう。
それでも、きっと、大丈夫です。
中学のあの頃から、変わらない優しさと、中学のあの頃より、強くなったあなたなら。
なので、あの頃からちっとも成長していない私は、変わらずに願うことにします。
あなたが幸せでありますように。
あなたのことが好きです、悪友として。
馬鹿な私より。
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恋文では断じてないが、あなたを想って。
読み返したら、ふんぞり返って死にたくなること必死なことを書いた気がする。
いつもポエミー成分多めな文章を書いているが、この宛てた文章は私の中のアンタッチャブルな部分に触れている気がする。
なので、気が狂れないように、読み返さないよう細心の注意を払うことにする。
嗚呼、「い」の所在についてだけ、それだけ気に留めておこう。
最も、私の書いた文章は、「い」の所在は不明で良い。
こふみ、何のこったか分からない、そうした方が良い。
あの頃の私よ、相変わらず私は駄目な人間で、済まないね。
最後に、私は小さなことでも祈ることにする。
皆様の恋が良い方向へ向かいますように。