夕暮れ空に淡く儚い雲が西にあった。
その空に一筋、飛行機雲が進んで行く。
明瞭な白い尾びれを力強く残しながら。
夕暮れ空にその尾びれは実に対照に映えて、美しかった。
夕礼の前に、昨日休みだった人が集められた。
私も休みだったので、その集まりにひょこり顔を出す。
伝えられたのは、人の悪意だった。
詳しくは書けないが、悪質な嫌がらせがあった。
そして、その悪質な嫌がらせをした人は誰だか分からない。
やり方が卑怯だ、と話しをしていた社員は苦虫を噛んだ、嫌そうな顔をした。
仕事をしながら、行くときに見た夕暮れ空と飛行機雲を思い出す。
思い出の中のあの空は一層、美しい景色のように感じる。
どちらも現実にあったことなのに、私自身も酷く汚されたような錯覚を垣間見る。
美しさとは、残酷だ。
他の雑多な物事を一切振り払い、ただそう在る。
私が美しい物を作れないのは、私が雑多な人間だからだろう、とまた1つ気付く。
何故、卑怯な方法を選んだのだろうか?
正面から糾弾する勇気がなかったのだろう。
やったことは許されないが、弱さまで否定したくない私は、何処の誰かも分からない人をそっと許す。
私は雑多な人間で良い。
ただ、時折、美しい物事を美しいと言う厚かましさを許してほしい。
美しい物事を私だけに留めないようにするから、それで勘弁してほしい。
ウインナーを頬張りながら、そんなことを考える。