没ネタになったコント台本があるが、勿体ないお化けが私の周りを彷徨く。
退散願うために、がっつり掲載してしまうことにする。
供養になるかは分からないが、一応、成仏はするだろう。
タイトルは「佐久が好き過ぎる男」だが、評判を下げているだけな気もしなくもない。
佐久が好きな人には、申し訳ない気持ちで一杯だ。
佐久は本当に良い所ですよ?
次いでに、カテゴリーも「素人が小説家気取り」に分類する。
いや、一応、物語と言えなくもないかな、と。
詰まらないことには変わりはないが、気持ち振り分けておく。
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目次
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1、はた迷惑な出会い。
A「着いたー、ここが佐久か…何もないな、うん、素晴らしい!これぞ田舎の風景だね」
A「こう、都会で汚れた心が洗われるというか…うん、素晴らしい!」
A「…さて、コンビニは何処かな~?」
B「ハイハイハイハイ!(ぶつかる勢いで飛び出す)」
A「!?(驚く)」
B「佐久へようこそ!」
A「え?何?え?」
B「佐久へようこそ!」
A「え?(辺りを見渡す)あ、私…ですよね?」
B「佐久へようこそ!」
A「特に答えてくれる訳ではない」
B「佐久へようこそ!」
A「あー、ありがとう?」
B「どういたしまして!」
A「一応、聞いてはいる」
B「何処へ行かれますか?」
A「何処に?あー、いや、佐久に降りたのは散策と言いますか?こう、自然を感じながら歩きたいなーって…」
B「山ですね!」
A「山?まー、山も綺麗ですね?」
B「荒船山へのアクセスは、国道254号線の内山峠から艫岩(ともいわ)を経由するコースがポピュラーですよ!」
A「え?あ、そうなんですね?」
B「車はどうされます?」
A「あ、いや、電車でここまで来たので車は…というより別に(私、登山はしないので)」
B「タクシー呼びますね!」
A「へ?」
B「(電話をかける)あ、ケンちゃん?俺俺、キング。今さ、登山客?が荒船山に行きたいって話しになってさー、ちょっと登山口までひとっきら…」
A「ちょ、ちょちょっと待ってください(ぶつかる勢いで制止する)」
B「危ないじゃないですか!」
A「あなたに言われたくない」
B「今、電話中です、ちょっと待ってください」
A「ちょっと待ってくださいは、こちらの台詞です」
B「(電話)あ、ごめんごめん、いや、変な人でさ」
A「あなたに、言われたく、ない!」
A「聞いて!話しを聞いて!」
B「?」
A「(一息吐く)落ち着いてください」
B「…あ、UFO!」
A「嘘を言わないで下さい」
B「ケンちゃーん、UFO!」
A「嘘を広げないで下さい」
B「…あ、ごめん、嘘です。UFOはいません、はい…」
A「ほら、ご覧なさい」
B「うん、ごめんね?うん、うん…ごめんね?はい、はーい(電話を切る)」
B「(すかさず)あ、UFO!」
A「…」
B「…」
A「(後ろを振り向く)」
B「(すかさず電話)あ、ケンちゃん!あのさ!…あ、まだ怒っている?…うん…うん…サチコのことは…うん…ごめんね?うん、うん、もうかけない。うん、ごめんね?はい、はーい(電話を切る)」
A「…」
B「…」
A「もう、いいですか?」
B「佐久へようこそ!」
A「今までのことはなかったことにする」
2、佐久の王(自称)。
B「何処に行かれますか?」
A「あー…その前にまず…あなた、誰ですか?」
B「申し遅れました!私は、佐久市在住3年目、何れはカフェを開きたい47歳、バツイチ子持ち、佐久市大好き、佐久間キングです!」
A「佐久間さん?」
B「はい!佐久の王、佐久間キングです!」
A「どちらかと言えば、庶民では?」
B「庶民?いいえ、王です。佐久間キングです!」
A「RPGゲームの序盤の町にいる案内人でしょ?」
B「案内人?いいえ、王です!佐久へようこそ!」
A「悪い人ではなさそう」
B「何処へ行かれますか」
A「…落ち着きましょう、佐久間さん」
B「キングです!」
A「佐久間さん?」
B「キングです!」
A「さく」
B「キングです!」
A「さ」
B「キングです!」
A「強い拘りを見せる」
A「キングさん」
B「はい、何でしょう?」
A「…個性的な名前ですね」
B「はい!キング牧師のように、何者にも屈しない夢を語る人に成るようにという意味が込められてます!」
A「あー、そういう…確かに屈しない人には成っている」
B「両親に感謝です!」
A「良かったですね…それでキングさん」
B「はい!何でしょう!」
A「キングさんはここで何をされているのですか?」
B「佐久の魅力をお伝えしています!」
A「ここで?」
B「はい!月、水、金の朝9時から夕方5時まで!」
A「そういうお仕事で?」
B「いいえ!フリーの佐久市民です!」
A「フリーで?」
B「はい!佐久の魅力をお伝えします」
A「悪い人ではないが、迷惑だ」
B「因みに、火、木、土、日、祝日はコンビニで働いています!」
A「あー、そうなんですね」
B「…」
A「…」
B「佐久へようこそ!」
A「それはもう分かりました」
A「折角なので、何処か案内してもらえますか?」
B「荒船山!」
A「登山はしません」
B「浅間山?」
A「登山はしません」
B「え?じゃ何しに長野に来たんですか?」
A「長野県は山しかないのですか?」
B「だって、周りを見て下さい…何にもないでしょー!(爆笑)」
A「ええー…」
B「何にも(笑)何にもないでしょー!(笑)」
A「…まあ何もないですね」
B「は?」
A「え?」
B「(切れ気味に)いや?良い所たくさんありますよ?佐久は?」
A「…例えば?」
B「荒船山!」
A「荒船山への強い拘り」
B「あ、行きます?」
A「行きません。他には?」
B「(長考)…浅間山?」
A「引き出しが少ない…長野県は山しかないのですか?」
B「だって、周りを見て下さい…何にもないでしょー!(爆笑)」
A「…」
B「何にもー(笑)何にもー!(笑)何もねぇ!(笑)」
A「…」
B「(唐突に真顔)何か言うことあるでしょ?」
A「面倒くさい」
B「ちょっとちょっとー、口に出てるよー?」
A「急に馴れ馴れしい」
B「誰が渋谷だ!」
A「一言もそんなこと言ってません」
3、渋谷はチャラついた奴しかいない?
B「俺はあんな渋谷みたいにチャラチャラしてねぇ!」
A「渋谷への敵愾心」
B「俺は、俺は渋谷を認めねぇ!」
A「…キングさん、何か渋谷で嫌なことでも?」
B「…俺には一人娘がいる、サチコっていう、それは可愛い娘が…」
A「話しが長そうだ…聞いてしまったからには仕方ない…サチコさん、良い名前ですね」
B「俺が名前で苦労したから…」
A「やはり」
B「普通の幸せを、そういう想いを込めてサチコって…サチコは内気で、昔は俺の後ろばかり着いて、全然離れなくてな…妻との離婚、ケンちゃんとの諍い、町田から佐久への移住…俺の人生の決断でどちらかを選ばなきゃいけない時、サチコはいつも俺と一緒に居ることを選んでくれた…」
B「ところが、去年の春頃から、サチコが変わり始めた。髪は茶色に染め、銀のアクセサリーに、ピアスまで空け、胸元を開け!スカートを短くし!どんどん派手になっていった!!」
B「男だ、悪い男がサチコに近付いている!このままではサチコが不幸になってしまう!俺はサチコの目を盗んでiPhoneに手を伸ばした」
A「一番やってはいけないパターン」
B「しかし、ロックがかかっていて見れない!そこにサチコが来た!俺が「あ、UFO!」と言ってもサチコは取り合ってくれない!」
A「むしろ、今まで「UFO」に反応してたことに驚く」
B「…俺は覚悟を決めた…サチコ…男ができた、のか?」
B「(戦慄く)駄目だ、駄目だ、駄目だー!そんな何処の馬の骨かも分からない…何?渋谷?」
A「ここで渋谷」
B「そんな…渋谷なんて!ほら、アレだ!待ち合わせ場所によくされる…アレ、犬の像の…秋田犬の…ん?そう、ポチだ!サチコは物知りだな!」
A「ハチだ。親子揃って間違えている」
B「そんなポチの前で待ち合わせをする男なんて、ろくでもない奴に決まっている!」
A「念のため、ハチだ」
B「どうせ、チャラついた男なんだろう!…え、真面目な人?嘘を吐くな!渋谷はチャラついた奴しかいない!」
A「偏見」
B「!待て、サチコ、何処へ行くんだ!話しはまだ…サチコ!サチコー!」
B「…くそっ、これもポチの性だ」
A「とばっちり」
B「お前もそう思うだろう?」
A「とりあえず、ポチは関係ありません」
B「お前も、そう思うだろうぉ…」
A「私に聞かないで下さい」
4、佐久間キングは気付かない。
B「(項垂れている)」
A「…サチコさんのこと、愛しているのですね」
B「…」
A「キングさんが辛いときや苦しい時、いつも支えてくれた、優しい娘なんですよね?」
B「…」
A「女性なのですから、オシャレぐらいしますよ。急に見た目が派手になってビックリしたんですよね」
B「…」
A「それでも、中身は変わっていないでしょう。きっと、サチコさんはキングさんのこと、大事に想っていますよ」
B「…そうかなー?」
A「そうですよ!そんなサチコさんが選んだ人なのですから、きっと、大丈夫ですよ」
B「それとこれとは、話しが違ーう!」
A「ぶり返し」
B「渋谷ー!くそ!渋谷ー!」
A「落ち着いて下さい」
B「渋谷ー!原宿ー!六本木ー!」
A「被害の拡大」
B「あああ!ポチー!」
A「とばっちり、再び」
B「サチコぉ…」
A「まあ、その、元気出してください」
B「…」
A「…」
B「佐久へようこそ!」
A「今までの流れ、ガン無視」
A「(溜息)…あ、駅員さん?あ、わざわざ済みません。ええ、区切りの良い所で退散します。いえいえ、私も暇ですから、ハハ!はい、ありがとうございます。…済みません、キングさん………居ない」
A「(電話をかける)…あ、サチコ?うん、お前の父さんに会ったよ。何つーか、キャラ濃いな?まー、心配しているようだからさ、電話ぐらいしてやりな、うん。そうそう、サチコ、渋谷の犬の像あるじゃん?あれ、ハチな?うん、そう、ポチじゃなくて…あ、それとあれだ、俺、渋谷から引っ越すわ、うん、うん」
end