ネガティブ方向にポジティブ!

このブログは詰まらないことを延々と書いているブログです。

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目が覚めれば、どっと汗が噴き出す。

塞き止めていた血液を一気に全身に流そうと、心臓が肋骨を叩く。

クーラーを止めてから、3時間ほど経った現在、私は涼を求めて台所へと向かう。

 

部屋を襖を開け放つと、ゲージの中で愛犬が足を伸ばして寛いでいる。

私の気配に気付いたのか顔をこちらに向けるが、それも一瞬で、ふいっとそっぽを向く。

私が容易にゲージから出さない人間であるから、媚を売っても仕方ないことをこの愛犬はよく知っている。

 

隣の部屋は真っ暗で、私の部屋の蛍光灯の光が夜明けの太陽の光のように差し込む。

足下で俯き加減の扇風機が心ここにあらずの体でぼけっと突っ立っている。

今日もフル稼働をしてきっと疲れているのだろうと、見なかったことにしてそっとしておく。

 

台所に着いて、真っ先に冷凍庫を開ける。

冷たい冷気がふわっと漏れ出て、その優しい冷気の中でバニラアイスが眠っている。

今からお前は私の胃の中で私の熱を奪うのに働いてもらう、と悪魔のような笑みを浮かべながらバニラアイスを手に取る。

 

ふと、机の上に、ザルにぼてっと入れられたミニトマトたちが目に入る。

薄緑色から赤色、大きいサッカーボール型から小さいラクビーボール型まで、色も形も大きさも様々なトマトが入っている。

これが本当のサラダボウル、と呟きながら2つミニトマトを摘まみ上げる。

 

ぱくっとミニトマトを奥歯で噛み締めると、程好い酸味が舌の上でさっと広がる。

上機嫌になった私は、ミニトマトのヘタを流しにある三角コーナーへぽいっと捨てる。

先に捨てられていた麦茶のパックの上に緑色のヘタが2つ、ぽてっと乗る。

 

銀のスプーンを小物入れから取り出す時に、縁にスプーンが当たって小気味良い音が鳴る。

足取り軽やかに真っ直ぐ自分の部屋に戻って、バニラアイスの蓋を開ける。

1、2分しか経っていないのに、容器のバニラアイスはすでに良い感じに溶けていた。

 

起きた時は地獄のような夏に恨めしく感じていた。

今は清涼な夏の食べ物に軽やかな気持ちだ。

熱い手の平返しに愛犬も扇風機も呆れた溜息が聞こえてきそうだ。

 

夏を満喫した、丁度良い、数分前の出来事だ。