まあるい月に睨まれながら、よるの道を走った。
眼前の平野には燦然と輝く町灯りが見えた。
遠く平野と天上の空は明るかった。
この明るさならライトを消しても問題ないかもしれない。
そう考えて、一瞬、自動車のライトの灯りを一段落とした。
さっと這い寄る暗闇に囲まれて、慌てて元の強い灯りへ戻した。
仕事終わりの18時30分、私は長野県佐久平のイベントに向かっていた。
到着予定時間は20時30分、イベントの終了時間は21時と、確実に出遅れていた。
しかし気持ちは前のめり、次いでに夕食でも食べておこう、と暢気に高速道路のチケットを取った。
相変わらず、まあるい月が睨んでいた。
曲がりくねった道をどの位置からも、まあるい月が睨んでいた。
身を縮めるような寒さが、まあるい月を荒涼とした雰囲気にさせていたのかもしれない。
イベントには出遅れたが、問題なく溶け込めた。
実にへんてこなパフォーマンスであった。
MCがメイン(?)のライブで、聞いてて笑っちゃうようなはっちゃけたパフォーマンスであった。
ごく最近に繊細ながらも過激な朗読を聞いたばかりの私は、 しっちゃかめっちゃかで明るい歌の奔流に身を任せた。
帰りにはがっちり握手までして、中々に楽しい時間になった。
世の中には本当に色々な表現があるのだな、と実感が籠もった。
雲に隠れていたまあるい月がやっこら顔を出した。
月明かりに照らされながら、缶コーヒーを買い、ぐいっと呷った。
ほお、と吐く息が白く、冬は今直ぐにでも秋と交代する準備ができていることを感じた。
まあるい月に睨まれながら、よるの道を走った。
眼前の平野には燦然と輝く町灯りが見えた。
天上の月のように誰にでも分かる明かりもあれば、平野の町灯りのように小さいけれど確かな明かりもあるのだろう、と考える。
眼前に見えるすべての灯りを目の奥に収めて、閉じ込めた。
今、目を閉じれば、暗い目蓋の裏をスクリーンにして、まあるい月とよるの道が映し出される。
さっと這い寄った暗闇がより鮮明に灯りを強くした。
もっと振れ幅を広げられるようにしたい、と感じた、金曜日かな。