規則正しく歪なビル群の光が見える。
不規則で脆い星々の光は頭上に光る。
吐く息は何処までも白く、ビル群と星々との間の真っ黒な夜へと吸い込まれていく。
古びたブロック塀に萎びた蔦が絡み這っている。
角の吹き溜まりには枯れ葉が肩を寄せ合っている。
かじかむ小指を手の平で握り、温めて寒さに抗う。
これから銀山温泉へ行く。
たまたま知り合ったお店の人に勧められたから。
理由など、それだけで良い。
難しい言葉やねじ曲げた意味でなくて、単純に、軽やかに、今を楽しむ。
刹那に見える景色の間で、小さな1つを積み重ねられたら良い。
いつも問題をややこしくしているのは、私だけだ。
あのビル群の光に、星々の光を難しく考えなくて良い。
あのブロック塀や吹き溜まりの枯れ葉の意味をねじ曲げなくて良い。
それはそのままで、良い。
人生を謳歌する、それだけを心に決めて。