朝、外に出たら雪が積もっていた。
今年最初の雪だ。
ぎゅむぎゅむと雪を踏み締めながら歩いた。
道路には黒い4本の線が荒々しく描かれていた。
雪の上を自動車が通ってできた轍だ。
どの自動車も黒い線から食み出さないように運転していた。
新雪の上を走ると、一瞬後ろに引っ張られる感覚があった。
信号機が赤色に灯ったからブレーキを踏めば、車体が左右に揺れた。
ギアをセカンドに入れて、いつもより慎重にゆっくりと走った。
家に着くと、母が愛犬と共に外で待っていた。
「ちょっと、散歩に行ってくれない?」、母はそうお願いしてきた。
滑り易い雪道をはしゃぐ愛犬と歩くのは少々危ないので、私は二つ返事で了承した。
軽快に新雪に足跡を付けていく愛犬に引っ張られながら歩いた。
いつもの散歩コースには朝早くから歩いた他の犬たちの足跡がぽつぽつとあった。
我が家の愛犬は鼻を突っ込んでは匂いを嗅ぎ、朝の痕跡を確かめていた。
鼻先に雪が乗っけたまま、さくさくと歩く愛犬に私の顔も綻ぶ。
立ち止まって、その間抜けで愛らしい顔を写真に収めた。
後で母に送っておこう、とほくそ笑む。
ゆっくりと、ゆっくりと時間が流れた。
今年最初の雪が降った朝、私はただただ歩いた。