沈みゆく世界を照らした一条の光の眩しいまでの白さを見送る。
一条の光で縁取られた景色は、次第に、着実に、黒くなってゆくのを受け止める。
今日から3月、行進曲がはじまった。
そんな記念すべき日は、特に記念になるような出来事はなかった。
混色した日常を、淡々と、着実に、消費しただけだ。
昨日とは大きく変わる出来事も、小さな私が気付くようなことも、何もなかった。
それでも、昨日とは違うのだろう。
もうすぐ春ですね、と聞き覚えのある歌が流れる。
もうすぐ春なのか、と感じ得ない変化に敏感なCMに瞠目する。
沈みゆく世界を照らした一条の光の眩しいまでの白さを見送った。
一条の光で縁取られた景色は、人工の光で取り分けられ、改めて縁取られた黒さを私は眺めた。
今日から3月、行進曲を口ずさむ。
春まっしぐらの一夜の言の葉をかき集めて。