頭の中で言葉を捏ねくり回しながら、部屋を出た。
灯りの消えたお馴染みの暗闇がずっくり居座っていた。
部屋の明かりで居座っている暗闇の、その重たそうな腰をすっと退かして、私はトイレへと向かった。
のろのろと歩くと、赤いランプと緑のランプが視界に入った。
赤いランプは固定電話、緑のランプは冷蔵庫から、それぞれ電気が通っているサインだ。
夜中でも有無を言わさず働かされている証拠で、ブラック企業も真っ青の過重労働の現場を見た気分になった。
のろのろと歩いていても、トイレには着くものだ。
便座を上げて、小さいが重要な用事を済ませた。
ふと、座った方が良かっただろうかと、些細だが重大なことのように考えた。
のろのろと部屋に戻って、再び、言葉を捏ねくり回し始めた。
「セメントで塗り固められた」と呟いた。
海馬を素通りして口から飛び出した言葉は、私の耳へもぞもぞと戻ってきた。
ブログで記事を書きながら、スマートフォンを指で繰った。
真新しい顔を振りしたよく見る情報がタイムラインを流れていた。
目で幾ら追っても、私の血や肉に成りそうもない。
ああ、そう言えば、明日は休みだ。
ああ、そうか、だからか。
のろのろと心臓から送り出された血は、今、ようやく私の脳へ届いたようだ。
もう少しだけ、言葉を捏ねくり回そう。
やらねばならないことだらけだが、それもその内、どうにかなる。
のろのろと、止まって見える雲だって、流れているのだから。
のろのろと、のろのろと、投稿する。