「全速力で生きていくんだ。
おお、生きていくんだ。
声の限りに歌うんだ」
と誰かが歌う歌のフレーズが反響する。
実に前向きで良い歌だ。
私はそれに答える。
「そんなに急いでどうするの?
ああ、もう疲れ果てているんだ。
今は寝起きだから、喉が乾いて歌えないんだ」
あら、反論になってしまった。
実に後ろ向きな朝だ。
ぺったりと畳と一体化した身体をべりべりと剥がして起きた私には、前向きな歌は容赦が無さ過ぎる。
カラオケで歌う歌はいつも大体前向きな歌だ。
カラオケでは声を張り上げて歌う。
前向きな歌はむしろ好きだ。
しかし、寝起きの耳元で声一杯に歌われてもうんざりするだけだ。
実に忌々しい。
正しいことを言えば何でも良いのか、そんな世の中、糞喰らえ。
完全にダークサイドに堕ちている。
実に清々しい。
やはり、朝は清々しくなければならない。
さて、畳が私を呼ぶ声が聞こえる。
何だが、忌々しく聞こえる。
剥がれて剥き出しになってヒリヒリする身体をさすって、動き出す。
「全速力で生きていくんだ。
おお、生きていくんだ。
声の限りに歌うんだ」
私が前向きに生きる。
後ろ向きの思考のまま。
中二病を患った大人は、生き辛さもハッピーセットだ。
一先ず、昨日の分を朝に書いて、投稿する。