いちいち、父の物言いにざわり苛立つ。
本当に自分本位な考え方に苛立つ。
そういう人だと分かっていても、苛立ってしまう。
父が私に「盆くらい線香をしろ」と威厳たっぷりに言う。
母が父に「だったら、あなたも線香を上げたら?」とそっと言うと、「俺は良いだ、何十年と一緒にいたんだから」とへらへらして言う。
矛盾したことを言っていることに、気付いていない。
私が台所からお菓子を数個持って部屋に戻る。
父が「また盗んで」と茶化すように言う。
言い方が人の神経を逆撫でるようだから、冗談が冗談に聞こえない。
母が録画したドラマを流し始めた。
そのタイミングで、最大ボリュームでスマートフォンの動画を見始めた。
母がさっと消すと「見ないの?」と言うのを目の当たりにして、正気で聞いているのか、と笑ってしまった。
そういう人なのだ、と頭では分かっている。
これが他人なら、十中八九、私は許せる。
これが自分の半分だから、腹が立つ、憎たらしい。
この人を許せる日は来ない、と私は観念している。
そして、そんな私の苛立ちを、父は知ることはないだろう。
それは幸福だろうか、それとも不健全だろうか。
この隔たりを他の人も持っているのだろうか?
私のような感覚は、世間一般からは外れているだろうか?
ぐずぐずと肥えていく白髪頭の父を見て、溜息が出てしまう親不孝者だ。
釈迦にならなければ優しくなれない、そんな境地に父を一瞥する。