私の傍らにモモが一つある。
楕円形の青みがかった白の上に、焦げたように濃い赤い皮が覆う。
ゴツン、と硬い実は今平たい机の上でゴロン、と転がっている。
稽古終わりに頂いたモモだ。
固い表情で渡された。
緊張なのだろうか、役づくりの一環なのだろうか、私には分からない。
「考えるなかれ、その役が感じたままを演じろ」
嗚呼、深く深く内面を掘り下げられずに苦悩する。
見たままのモモのように、そのままを演じられれば良いのに。
私の傍らにモモが一つある。
このまま机の上で腐るのも待つか、皮を剥いて美味しく食べるか、私が決めなければならない。
ゴツン、と固い身は今足を投げ出してゴロン、と転がることにする。