何も負わずに前に進めたら、どんなに良かったか。
責任だとか、期待だとか、そういうものが伸し掛かってくる。
ぽたぽたと顎の先から汗が落ちて、渇いた地面に黒い染みを作っていく。
何も考えずに生きれれば、どんなに良かったか。
私一人の身一つで、周りと見渡すこともせずに歩けたならば。
視界は広く、どこまでも続く道に胸を焦がすこともなかった。
顔を自然と下を向き、黒い染みができる様をただ眺めるばかり。
負うばかりに生き辛く、背負うことが生きることと伸し掛かってくる。
私は何もかもを投げ捨ててしまいたい衝動をぐっと堪え、堪えてしまい、ただただ自分の顎の先から落ちる汗の不快さに舌打ちする。
何も負わずに前に、そういうことが叶わない。
何故なのか、パッケージに、規格にはまらなければいけないのか?
私は少しでも顔を上げて、視界を広く持ちたいと願うばかりだ。
負うものが増えれば、それによって身体は沈む。
身体が沈めば、顔が下を向いてしまう。
顔が下を向いてしまえば、見えるのは自分の足下ばかりだ。
例え、苦しくても顔は上げなければならない。
そうしなければ、見落としてしまうことがある。
しかし、負うものの重さに、顔を上げるのさえ一苦労する。
何も負わずに前に進めたら、どんなに良かったか。
何となしに、ふとそう考えた。