ネガティブ方向にポジティブ!

このブログは詰まらないことを延々と書いているブログです。

【皮と骨とが剥がれる音】終盤へ。

終盤、過去と現在が繋がる。

(これくらいならセーフ?アウト?)

 

 

6、(回想終わり)皮剥の館。

 

照明、背景薄暗い黄色。

音響、床や壁が軋む音。

市ヶ谷、上手から九十九の足下へ。

 

市ヶ谷「フー、フー、フー……つ、九十九さん、い、医者、医者をよ、呼んで……フー、フー、フー……」

九十九「随分と苦しそうじゃないか、ブタ?」

市ヶ谷「フー、フー、フー……つ、九十九さん、お、お願い、お願いします、い医者を……フー、フー、フー……」

九十九「ああ、分かった。すぐ直そう」

 

市ヶ谷、顔を上げる。

九十九、市ヶ谷の額に拳銃を押当てる。

音響、銃声。

市ヶ谷、無言で倒れる。

 

九十九「ほら、これでもう壊れる心配はない。名医だと思わないか、ブタ?クックックッ……」

 

小夜、雨羅、上手から市ヶ谷の対角線上へ。

 

小夜「ごきげんよう、九十九一」

雨羅「久しぶり、九十九一」

九十九「ようこそ!待ちくたびれたよ!……おや、他の2人はどうした?いないようだが?」

小夜「ああ、あの2人は今、相談中よ、幸せなブライダルのね」

九十九「ほう?それは目出度いな。死ぬ前に誓いを立てたかったのかね?」

小夜「さあ?ただ、私から言えることは、死は2人を分つ(わかつ)ことはないってこと」

九十九「クックック……素晴らしいじゃないか。私からも祝いの言葉を贈っておこう」

小夜「そうして頂戴。友人代表は私だから、そこは譲らないわ」

九十九「どうぞ。私はただ偶然居合わせただけの、赤の他人さ……おめでとう、名も知らない2人よ、幸せに」

雨羅「2人も喜ぶことだろうよ。それで、他に言いたいことは?」

九十九「ん?……ああ、1つ……私を存分に楽しませておくれ!」

小夜「ええ、望み通り、叶えてあげるわ!」

雨羅「ああ、望み通り、叶えてやるよ!」

小夜「私が」

雨羅「あたしが」

小夜、雨羅「お前の死だ!」

 

小夜、九十九に切り掛かる。

九十九、バックステップで躱す(かわす)。

雨羅、九十九の懐に飛び込む。

九十九、拳銃を撃つ。

音響、銃声(2発)。

雨羅、仰け反って避ける。

小夜、更に詰める。

音響、館が大きく軋む音。

小夜、一瞬、動きが止まる。

九十九、小夜の顔に掌底。

小夜、避ける。

九十九、小夜と入れ替わり、拳銃を撃つ。

音響、銃声。

小夜、バックステップで避ける。

雨羅、九十九の利き手(拳銃を持っている方)の反対側から迫る。

九十九、指を鳴らす。

小道具、九十九の手から煙。

音響、破裂音。

雨羅、ぐらつく。

九十九、拳銃を撃つ。

音響、銃声(2発)。

雨羅、倒れる。

九十九、バックステップしながら、弾の装填をする。

 

小夜「雨羅、生きてるー?」

雨羅「……ああ、生きてるよ。あー、耳がジンジンする……」

九十九「火薬の扱いには多少の心得があってね。黒色火薬に手袋に取り付けた信管で炸裂させるお手軽なものだよ。殺傷能力はそれほどないが、相手を封じるには十分でね、重宝しているよ」

雨羅「顔に痕(あと)が残ったらどうしてくれるんだよ……」

九十九「おや、素敵だと思うがね?お気に召さない?」

雨羅「全く、気に入らないね」

九十九「クックック、それは残念だ」

小夜「ご高説、どうも。奇術師にでもなったらどう?」

九十九「……ああ、奇術師。悪くない、悪くないよ……私にそんな自由があれば、ね……」

 

音響、女の呻き声。

照明、チカチカと点滅。

 

九十九「ああ、いけない。タミコが来たか。では私はこの辺で」

 

九十九、小夜、雨羅の反対側へハケる。

音響、施錠される音。

 

小夜「(雨羅を起こしながら)初戦は負けね。意外と良い動きをするわ、九十九一」

雨羅「……ああ、間合いを詰められた時の対処がよく考えられてるわ……」

小夜「さて、タミコが来るわね」

雨羅「……どっから抜けてった?九十九一」

小夜「九十九一の抜けた先は分かるけど、普通に施錠(せじょう)していったわね」

雨羅「だよな……ここがあたしらの死に場所かい?」

小夜「このまま足掻かなければ(あがかなければ)、そうでしょうね?」

 

照明、下手に白のスポットライト。

 

小夜「あら?ごきげんよう、幽霊さん」

皐月N「……あなたたち、文月のお友達?」

小夜「友達、ではないわね。ただ、彼女の希うこと、切願うことを聞いた者よ」

皐月N「文月の願い……」

雨羅「おーい、誰かいるのかー?」

小夜「ええ。ちょっと交信しているから、静かに(人差し指を口元へ)」

雨羅「オッケー」

小夜「それで、何か御用(ごよう)かしら?」

皐月N「……文月は、元気?」

小夜「さあ?とても元気ハツラツ!って感じではなかったけど。普段の文月がどんな風なのか、私、知らないし、まあ、普通くらいの元気ハツラツ!よ」

皐月N「……何を、願った、のですか?」

小夜「知りたい?何を希ったのか?切願ったのか?知りたい?」

皐月N「…………はい」

小夜「……私たちが聞いた願いはね、「九十九一を殺して、終わりにして欲しい」よ」

皐月N「終わりに……」

小夜「そう、終わりに。幽霊さん、それであなたは私に何を言いたいの?」

皐月N「……もし、あなたたちが、終わりにしてくれるなら。もし、あなたたちが、私の言葉を伝えてくれるなら……」

小夜「終わりにするし、あなたの言葉も伝えるわよ。あ、伝言はサービスね、出血大サービス!」

皐月N「文月に伝えて……(何かを言っている)」

小夜「……分かった、伝えるわ」

皐月N「……抜け道を教える」

 

照明、下手の白いスポットライトが消える。

 

小夜「交渉成立。ウフ、話の分かる幽霊さんで嬉しいわ」

雨羅「お、何だって?」

小夜「抜け道を教えてくれるって」

雨羅「そいつは有り難いね」

 

音響、扉がバタンと開く音。

ノエル、仁科、上手からノロノロと歩いて出てくる。

市ヶ谷、のっそり起き上がる。

 

小夜「あらあら、大行進ね。最近流行りの俊敏(しゅんびん)ゾンビじゃなくて、薄鈍(うすのろ)ゾンビってのが高ポイントね」

雨羅「高ポイントなのは良いが、これ、相手してたら逃げ切れなくね?」

小夜「私は幽霊さんを追わなくちゃいけないから、雨羅に頼むしかないんだけど?」

雨羅「うへえ……こいつぁ大仕事だ」

小夜「雨羅、私、ささやかな夢があるの」

雨羅「お?ささやかな夢かい?何だい、そりゃあ?」

小夜「ホームランボールをキャッチしてみたい」

雨羅「……ハハハハハッ!わーったよ!特大ホームランを決めてやるよっ!」

小夜「丁度良い所に、長い棒があるわ、はい」(投げて渡す)

雨羅「(受け取って)おらぁ!まとめてぶっ飛ばしてやんよ!」

小夜「それと、モツも宜しく」

雨羅「あいよ!次いでにハツも如何かね?」

小夜「素敵!最高のショーが観れそう!ありがとう、雨羅」

雨羅「どういたしまして、小夜……さあ、バッチこいやぁあ!」

 

小夜、下手にハケる。

雨羅、市ヶ谷を蹴り倒し、下手にハケる。

ノエル、仁科、市ヶ谷、ノロノロと下手にハケる。

 

⑥、(回想)とある街の片隅。

 

照明、地明かり、舞台中央に白のスポット照明。

文月、下手から舞台中央のスポットの中へ。

文月、手紙を握りしめて、呆然と立ちすくむ。

 

文月「…………皐月が、死んだ。民子に、殺された……皐月が、民子が……」

 

音響、電車の通過音、踏切の音、自動車の通り過ぎる音。

 

文月「…………何で、私は、生きているんだろう?何で、私は……何で、彼奴(あいつ)は生きているんだ?九十九一は、何で、生きているんだ?」

 

文月、顔を上げる。

 

文月「……清算しなきゃ、すべてを終わらせなきゃ……」

 

市ヶ谷、下手から下手側手前へ。

 

市ヶ谷「デュフフフフ、殺しの依頼?も、もちろん、請けても良いけどぉ、き、君とも遊びたいなぁ……お?お?良いのかい?デュフ、ヒヒヒヒッ!よ、喜んで、引き受けるよぉ!き、君もき、綺麗にして、ま、待っててね?ヒヒヒヒッ!」

 

市ヶ谷、下手へハケる。

 

文月「……連絡がない……これで7人目……お金も、これだけしか……これで、最後にしよう……これで、ダメだった時は……その時は、死んで、詫びよう(わびよう)……私に、できることなんて、もう……」

 

音響、オルゴールの悲しげな音色。

 

文月「ごめんなさい、皐月……ごめんなさい、民子……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

文月、下手へハケる。

音響、オルゴールの悲しげな音色を静かに止める。