仕事からの帰り道、畦道にある自動販売機に立ち寄った。
100円玉1枚と50円玉1枚を硬貨入れに投入した。
軽妙な音楽が短く流れ、ガコン、と飲料缶が落ちてきた。
飲料缶が落ちると、チャリン、と釣り受けにもお釣りが落ちた。
右手の指先で釣り受けから硬貨を取ろうとする。
ぬめ、として冷たい感触がした。
驚いて、勢い良く、手を頭付近で持ち上げ、身体を後ろに1、2歩下がった。
指先に引っかかった、ぬめ、としたモノはひび割れたアスファルトへと落ちた。
ぬめ、としたモノの正体は、カエルであった。
釣り受け口をよく見ると、飛び出し防止用の蓋が外れているようであった。
大きく口を開いた釣り受け口に、カエルはそのまま入っていったのだろう。
指先をこすり、ぬめ、の感触を落とそうとしながら、カエルを見やった。
カエルは何食わぬ顔でさっさと自動販売機の下へと潜っていった。
カエルは何も感じなかったのだろうか?
いや、カエルにとって人間の体温は少々高い。
カエルにしてみればゆっくり休んでいた所へいきなり熱い何かが身体を当てられた訳だ。
しかも、次の瞬間、外に投げ出されている。
カエルはカエルで大変に驚いたのかもしれない。
お互いに驚いたな、とカエルを見送ってから、日が落ちた道へ戻った。