松本市上土劇場にて「流れる雲よ」を観劇した。
久方ぶりの演劇鑑賞だ。
たまたま上演時間に行けたので、そのまま観に行った次第だ。
ここでは奇譚なく、正直に書く。
もしかしたら関係者に読まれるかもしれない恐怖を抱きながら、正直に書く。
わざわざ私のブログにまで来て読むようなことは無いだろうが、正直に書く。
一応、ネタバレも含まれている。
一応、まだ観劇してなくてこれから観る予定の方は自己責任で。
一応、続きを読むにして、手間を挟む。
さて、私の正直な感想は、ズバリ。
「私の好みではないな」である。
言葉を選ばずに言えば、「詰まらない」だ。
終戦間近の特攻隊をモチーフにした演劇で、昭和のラジオが現代のラジオ番組と繋がるSF要素もある。
全体的に特攻隊員たちの心理描写に重きを置いていて、メッセージ性が強い。
10代の人たちが観劇すれば、思うところがあるかな?とは感じた。
しかし、どうも、私はのめり込めなかった。
まず、合間合間にある楽曲が長い。
楽曲の曲の長さがどこも同じ位長い、短く切るとか、あえて長く間を取っているとかじゃなくて一様に長い。
だからかテンポがワンパターンで、私はちょっとしんどかった。
心理描写に重きを置いているはずなのだが、どうもピンと来ない。
訓練風景を現代風なビートに乗せて身体表現するのだが、「辛い訓練を頑張っている」というのは感じられず、「俺たち楽しんで訓練してるぜ」というポップさが全面に出ていて、何か違和感があった。
当時の特攻隊員たちも「楽しんで訓練をしていた」というのであれば良いのだが、多分、もっと大真面目に取り組んでいただろうし、憂鬱感が強いのでは?というのが私の感覚だからだろう。
特攻シーンも、ゲームのボス戦のような演出に観えてしまい、シリアスなはずなのに思わず笑ってしまった。
動きが多いので演劇としては良いシーンなのだが、必要か、と聞かれれば無くても良い。
そういう意味では、各隊員の思いの描写をもっと力を入れたら良かったのに、とも感じた。
個人的に一番しっくり来ないのは、ラジオの存在だ。
未来からの電波を受信した、などというのかなり突拍子もない話なのに、そこら辺の導入が微妙なのだ。
多分、過去と未来の人間がやりとりするシーンがやりたかったから、ラジオを捩じ込んだのではなかろうか?
時事ネタも入っているから、「現代と地続きなんだな」と感じてもらいたいというのもあるのかもしれない。
しかし、どうもしっくり来ない。
まず、「未来からの放送だ」と結構早い段階で断言するが、何を根拠にそう感じたのか分からない。
怪電波として考えるのが自然ではなかろうか?
ラジオで「長崎に原爆が落とされる」と言っている→長崎に原爆が落とされた→これは未来からでは?の順番ではないのか?
海外の情勢についても触れているので、今の現状と合わないからというのも分からなくもないが、そこから未来からの電波とはならない気がする。
それで「未来からの放送」だと戦争が終わる、戦争が終わるのはすぐだ、というのを飛び立つ前の特攻隊各隊員に吹聴するのだが、ここもよく分からない。
隊長が「隊員心を乱してどういうつもりだ」と殴り飛ばして立ち去るのは、そういう反応になるだろう、とは感じる。
しかし、その後、割とあっさりと受け流して、「未来の放送が本当だったとしても我らの特攻は意味がある」(私が受け取った意訳)と結論付けていた。
何か、釈然としない。
事実を元にしているから、特攻隊員たちは特攻するのだが、ラジオを放送が本当か嘘か、本当なら飛ぶべきか否かの葛藤はあるはずだ。
そして、必ずしも事実に添う必要はない、つまり特攻しない人間も居ても良いはずなのだ。
心理描写を重きを置くのであれば、むしろここが一番力を入れるべきところではなかったのではなかろうか、と私は考えてしまう。
「未来のために命を使う」という特攻隊員の生き様は良い、しかし、生の人間であるならばもっとあくどさ、卑怯さがあっても良かった。
全体的に特攻隊員が美化されているように感じられたのも、受け付けなかった。
隊長はもっと嫌な奴で良かったし、根暗はもっと根暗で良かった。
性格の良き面を全面に出し過ぎて、悪い面も含めてその人という考えの私には人間らしく感じられなかった。
一キャラクターである、とするならば、そういうキャラクターだと割り切れるが、そういう演劇だったかというとそうじゃないように感じる。
しかし、全く酷かった、というとそれもまた違う。
個人的には、脇役が光っていた。
お母さん役の人、ラジオパーソナリティーがとても良かった。
格納庫の火災シーンは迫力があって良かった。
全編に渡り、照明が実に美しかった。
これらの感想をまとめると、「私の好みではなかった」になる。
前述した「詰まらなかった」は、流石に言い過ぎかもしれない。
ただ、エンターテイメントでもメッセージとしても中途半端さがあって、勿体ない。
後ろから刺されるのではないかと怯えながら、正直に書いた。
正直に書いたが、私の好みではないというだけで、刺さる人には刺さる劇には違いない。
スタッフの多さが物語っているし、企画者はかなりの熱意で動いていたようだ。
刺さるかどうかは私は判断できないので、気になる方は観劇した方が良い。
以上、「流れる雲よ」の観劇感想だ。