信じられない、と最初に感じた。
自分と他者の感覚の違い、と言ってしまえばそれまでだ。
しかし、結構な驚きを感じたのは本当だ。
私は油揚げの製品工場で働いている。
私の担当ラインは他と少し違って、他ラインで商品にはできないが食べられる油揚げを集めて、その油揚げを刻む機械に入れてもらって、その刻まれた油揚げを袋詰めしている。
他ラインの調子や状況によって、商品にできないが食べられる油揚げ(以下、B製品)の量は変わって来る。
工場内にB製品を置くための専用冷蔵庫はあるが、日によって一杯になる時がある。
その場合は共用冷蔵庫に持っていってもらうのだが、こちらとしては専用冷蔵庫の方が都合が良い。
なので、なるべく専用冷蔵庫を整理してスペースを空けるようにしている。
さて、その日も仕事しながら専用冷蔵庫のスペースをどうにか空けた。
これだけ空いているなら、今日は共用冷蔵庫に持っていくことはなくて良いだろう。
そう考えて、しばらく普通に仕事していた。
他ラインのオペレーターさんが専用冷蔵庫にB製品を入れた。
私が気付いて、中を確認したら、専用冷蔵庫の出入り口に雑に入れているだけだった。
これも仕事、と私が整理しようとした。
その時、そのオペレーターさんが聞いてきた。
「もう入らないね」
え、と私は思わず冷蔵庫の中を再度確認してしまった。
私の目がおかしくなっていないのであれば、物が入るスペースは十分にある。
斜めに入れられた手前のB製品さえそのスペースに入れれば良い。
この人にはこの空いた空間が見えていないのか?
私は「いや、まだ入りますよ?」と言うと「ああ、そう」と言って戻っていった。
前々から雑に入れているなとは感じていたが、空間を把握していない説が浮上してきた。
この人の自宅の冷蔵庫の中はどうなっているのだろうか、と他人事ながら気になってしまった。
空いているように見えていたのは私だけ、と覚えておく。