2021年12月中旬にやった2人芝居の脚本。
これも突拍子しかないな…
普通の会話ってどうすればできるのだろうか…？
大体10分程度の内容。
続きより本文。
【後の祭り、その前に】
・登場人物
小林 せりか（こばやし せりか）
高田 よしの（たかだ よしの）
1、集会所の外。
小林、高田、対面している。
高田 （時計を見る）あー、こんな時間か。じゃあ、後はお願いします
小林 いやいや、お願いされませんよ？
高田 いやいや、お願いしますよ？
小林 高田さんが引き受けてくださいよ
高田 そこは小林さんが、ね？やってくれると、ね？
小林 いやー、ここは、高田さんじゃあないですかね？
高田 いやー、やっぱ、小林さんが良いと思うなー？
小林 いやいやいや……
高田 いやいやいや……
小林、高田、お互いに困った顔で見合わせる。
高田 ……状況を整理しましょう
小林 ……状況を整理する？
高田 お互いに、こう、感情的になっていますし？冷静に、客観的に？ 話をするために、一度、状況確認をしたら、こう、 どっちが引き受けるかも、ね？
小林 ……そう、ですね。一度、冷静になるために、そうですね
高田 えー、まず、私は高田よしのと言います。
小林 え、自己紹介から？
高田 え、駄目ですか？
小林 いや駄目じゃないですけど……よしのって名前だったんですね
高田 あー、そうです。よしのって名前なんです、私……小林さんは？
小林 あ、私の名前？せりかです。小林せりか
高田 ハハア、せりか、またハイカラな名前ですね
小林 ありがとうございます、よしのも良い名前ですね、吉報がありそう
高田 あ、よしのの「よし」はそういう意味合いがあります
小林 成る程……それで、えー、どこから？
高田 どこから……えー、まず例年の焼肉会が中止にしよう、 という話が持ち上がったところからでしょうか？
小林 私、こちらに越してきてから初めて知りましたよ、焼肉会なんて
高田 そうですか？みなさん、やりません、ご近所で焼肉を食べる会？
小林 全然ないですね、長野県だけじゃあないですか？
高田 そうなんですかね？……えー、その焼肉会が中止にしよう、 という声が上がった訳です
小林 まあ、このご時世、当然と言えば、当然ですけど
高田 それで、毎年徴収している、代金をどうしようか、 という話になりまして。
小林 お金の絡む問題ですね
高田 内海（うちみ）さんがクーポン券にして、みんなに配ろう、 と提案して
小林 まあ、そのまま返金した方が良いという声もありましたけど、 まあ、概ね、みんな、クーポン券にする案に了承して
高田 そのタイミングで、木口（きぐち）さんが……
小林 ……木口ぃ……なんで、決まったことを、 後から引っ掛け回すかな？
高田 「焼肉会で集めたお金なのだから、焼肉会で使うべきだ！」、「 ただの風邪なのだから、何も問題ない」、「 クーポン券にするなら、来年からお金を出さない」
小林 もう、出さなくて良いですよ……
高田 気持ちは、分かりますけど、本人に言っちゃあ……
小林 ……その点に関しては、申し訳ない
高田 ……木口さんが広場にブルーシートを引き始めて、 野田さんとも一悶着起こした時も「俺は関係ない！ 小林に出さなくて良いって言われた！」とか言ってたそうですね… …
小林 その悶着、関係ないじゃないですか、私……
高田 ……それで、今回の焼肉会の持ち回り担当である私と、 小林さんで木口さんに謝りに行って
小林 まあ、こちらが大人になりましょう、と折れましたよ、ええ
高田 それで、何故か、地区の祭りに出ろ！と言い始め
小林 ……振り返っても意味分からないんですけど？今回の焼肉会と、 地区の祭り、脈絡が無さ過ぎません？
高田 まあ、それは、まあ、木口さんだから……「 悪いと思っているなら誠意を見せろ！」、「 地区の祭りで人が足りないから手伝え」……正直、もう少し、 言い方があるだろう、とは思ってしまいました
小林 そうでしょう！
高田 ただ、木口さんを大人しくさせるためには、引き受けた方が、ね？
小林 ……私が納得してないのに、高田さんが引き受けたんですよね？ それなら、高田さんが祭りに出れば良いじゃないですか
高田 いやー、私は、あくまで、仲裁でして？事の発端の小林さんが、 ね？引き受けるのが、ね？丸く収まるっていう、ね？
小林 だから、焼肉会の件は私にも非があると思ってますけど！何で、 子どもがうじゃうじゃいる祭りに出ないといけないんですか？ 大体、木口は出ないようじゃないですか？おかしくありません？
高田 ……まあ、その、地区の祭りの実行委員会、田沢（たざわ） さんがいるんですけどね？まあ、その、ちょっと、ね？
小林 あー……あの人、どこでも大きい顔しているんですね
高田 （時計を見る）まあ、そういうことなので。後はお願いしますね
小林 いやいや、お願いされませんよ？
高田 いやいや、お願いしますよ？
小林 高田さんが引き受けてくださいよ
高田 そこは小林さんが、ね？やってくれると、ね？
小林 いやー、ここは、高田さんじゃあないですかね？
高田 いやー、やっぱ、小林さんが良いと思うなー？
小林 いやいやいや……
高田 いやいやいや……
小林、高田、顔を見合わせ、黙る。
高田 ……折衷案、と行きましょう
小林 ……折衷案？
高田 小林さんは、子どもの相手が嫌なのですね？
小林 ……はい、ちょっと、耳元でぎゃあぎゃあ言われるのが、 しんどいと言いますか
高田 ……私が子どもの相手をします
小林 え？高田さんが祭りに出てくれるのですか？
高田 その代わり！裏方を、小林さん、出て頂けませんか！
小林 ……裏方、ですか？
高田 確かに、私が勝手に、引き受けたという、小林さんの弁、 最もです。その点は私もいけなかった。なので、私も、 祭りに出ます。ただ、小林さんにも、祭りに出て頂けると、 私の顔が立つので、どうか、この通り、お願いしたいのです
小林 ……高田さん、本当に巻き込まれただけじゃないですか？何なら、 二人で断ってしまうってのもあるんじゃないですか？
高田 ……木口さんは、ちょっと、難のある性格です。ええ、 難ありです。でも、自分がそうじゃないか、と聞かれると、 そういう訳じゃない、と考えてまして。人間、無くて七癖、 あって四十八癖。今後も付き合いがある中で、 お互いに助け合わないと、ね？遠い親戚より、近くの他人、 いざって時に、助けてもらいたいじゃないですか？
小林 高田さんって、お人好しですよね
高田 よく言われます
小林 ……分かりました。裏方なら、やります
高田 あー、良かった
小林 ……あー、あの時、何で言っちゃったんだろう……
高田 まあ、そうですね……
小林 こういうの、後の祭り、って言うんですよね？
高田 あー、そうですね、後の祭り。祭りとかけて？
小林 そうそう、祭りとかけて
高田、小林、お互いに肩をすくめる
高田 当日は、よろしくお願いします
小林 こちらこそ、よろしくお願いします
2、祭り当日。
高田、小林、法被を着て、盆踊りを踊る。
高田、子どもに呼ばれてわちゃわちゃする。
小林、運営に駆り出される。
賑わいながら、夜が更ける。
了。
