以前に「Zoomでやる脚本」のリクエスト？があって、いそいそと書いたものだ。
文字数7900文字超え…時間で言えば、おおよそ20分か。
登場人物は7人と私が書く脚本の中では多め、普通、何人なんだろう？
想定がZoomだが、舞台でも演出次第でできる、はずだ。
【小さな絶望の成れの果て】
・登場人物
齊藤 真（さいとう まこと）
「より良い世界を目指す、芹沢実支援会」 のミーティングの参加者。芹沢とは友達。
芹沢 実（せりざわ まこと）
人の脳のホルモン物質を栄養源とする生体ロボットを自動学習する ドローンで空中散布し、人類の3分の2を死滅させた張本人。
三階 カスミ（さんかい かすみ）
同ミーティングの参加者。
蕪川 草一郎（かぶらかわ そういちろう）
芹沢の支援者。ドローンの基地、電源供給、 工場など後方支援している。今回のzoomのホスト。
御行 法子（みゆき ほうこ）
フリーの記者。とにかく特ダネが欲しい。
波久部 良（はくべ りょう）
同ミーティングの参加者。
大根 優（おおね やさし）
齊藤真の幼馴染、真に片思い。
1、zoom、ミーティングルーム
蕪川、画面に現れる。
画面に参加者が続々と現れる。
蕪川、全員が画面に表示されたのを確認する。
蕪川 えー……音声は大丈夫ですか？聞こえるでしょうか？
齊藤 あ、はい、大丈夫です
三階 聞こえます
御行 はいはーい、問題ないでーす
波久部 はい、聞こえます
大根 聞こえますよー？
蕪川 はい……大丈夫そうだね。では、「より良い世界を目指す、 芹沢実支援会」のミーティングを始めます。今回、 ホストをさせて頂きます、私、蕪川草一郎です。 よろしくお願いします
齊藤、三階、御行、波久部、大根 よろしくお願いします
蕪川 えー……では、まず、この会の目的から話させて頂きます。「 より良い世界を目指す、芹沢実支援会」は、 この世界を一変させた、 芹沢実を支援することを目的としています。皆様もご存知の通り、 芹沢は多能性幹細胞、所謂、iPS細胞から従来にない、 全く新しい生体ロボット、通称「ハルポー」を作製しました。 ハルポーは、 人間の脳から分泌されるホルモン物質を自身の胚に取り込み、 増殖する仕組みになっています。 脳で増殖されたハルポーはより多くのホルモン物質を促します。 特に多幸感をもたらす物質エンドルフィンを。それによって、 うつ病や精神病の改善に大きく寄与したのは皆様の記憶に新しいこ とでしょう。芹沢はより良い世界にするため、 ハルポーをドローンによって空中散布する方法を選択しました。 芹沢独自の高機能化された自動学習するドローンは、今も、 世界中の空を飛んでいます……えー、しかし、 ハルポーには重大な問題がありました。 ホルモン物質を過剰に促進、 増殖するハルポーの要求に脳が機能停止を引き起こしていったので す。そのままハルポーは脳で更なる増殖、 人間を死に至らしていった。 芹沢の善意によって世界で稼働するドローンは独自のアルゴリズム から人間の行動を予測、ゲリラ的に散布を繰り返しています。 現在、世界の人口は3分の1にまで減少、 芹沢実は国際テロリストとして指名手配されています…… ハルポーの運用において、芹沢実は間違いを犯しました。しかし！ 彼の頭脳は人類の宝です！彼の見据える世界は、 私たちの常識では測れません。旧人類の、 常識によって彼を失うことは、人類の損失です！この会は、 芹沢実の活動を支援し、世界をより良くしよう、 世界をより良くしたい！そうした志をもった人間が集う会です…… 極秘裏で動いているため、 中々にご賛同者を集うのは厳しい状況下でありますが、こうして！ 同じ志の人たちが集まれたのは、僥倖に巡り会えた、奇跡だと、 私は思うのです……今回のミーティングは、 親睦会を兼ねております……では、最初に、皆様の自己紹介を、 して頂きましょうか……そうですね、齊藤さん？お願いします
齊藤 ……えっと、齊藤、真です。あ、読みは「まこと」で芹沢、 さんとは同じですけど、私のは、真実の真で「まこと」です。「 より良い世界を目指す会」？に参加できて、感無量です。えっと、 よろしく、お願いします
蕪川 はい。では……次に、三階、さん。お願いします
三階 三階カスミです。主婦です。 今回参加できて良かったと思っています。よろしくお願いします
蕪川 はい。では……済みません、「おぎょう」さん？
御行 「みゆき」と読みます！
蕪川 あー、御行さん、失礼しました。お願いします
御行 ごほん！私、TWプレスの御行法子と言いまーす！
蕪川 あー……記者さんですか……
御行 蕪川さんのお噂は兼ね兼ねー、 芹沢の右腕と呼び声高い蕪川さん主宰の会にこうして参加できて感 激でーす！色々とお伺いできたら良いなーって、うへへ
蕪川 （渇いた笑い）……あー、後ほど、に……えー、次に、波久部、 さん
波久部 はい。波久部、良と言います。「より良い世界を目指す、 芹沢実支援会」の趣旨に賛同して、応募しました。 芹沢実は私が見たことのない世界を作ってくれる、そんな予感、 いえ、確信があります。 この会を開いてくださった蕪川さんには格別の感謝をお伝えしたい
蕪川 いやー、君のような若い人にそう言ってもらえると嬉しいね。 共により良い世界を目指しましょう
波久部 はい。より良い世界を！
蕪川 より良い世界を！では、最後に、「おおね」、さんで、 良いですか？
大根 あー、はい、合ってます。えー、大根優と言います。 清掃業をしています。彼女、募集中でーす。あ、関係ないか。 よろしくお願いしまーす
蕪川 ……はい。ありがとうございます
御行 はいはいはいはい！
蕪川 何です？御行さん？
御行 今回の！この会に！ スペシャルゲストが参加すると聞いたのですが！
蕪川 お耳が早い……はい、そうです
御行 その人物は、超大物だと、お伺いしたのですが！誰なのですか？！
蕪川 まあ、勿体ぶっても仕方ないか。ええ、超大物です！早速、 ご登場頂きましょう！芹沢実です！
芹沢、画面に表示される。
齊藤 セリちゃん！
芹沢 ……これ、繋がってる？……あー、あー、蕪川さん、 聞こえますー？
蕪川 はい、聞こえますよ
芹沢 ……駄目だ、全然聞こえない……ちょっと、一旦抜けますねー……
芹沢、消える。
蕪川 済みません。配線トラブルですね。少々、お待ちください
三階 齊藤さん
齊藤 あ、はい
三階 芹沢とはお知り合いで？今、「セリちゃん」と、 愛称で呼びましたよね？
齊藤 あ、はい。中学の頃からの、友達で……
御行 ほほー？あの芹沢実の！当時は、どんな人物だったのですかっ！？
齊藤 えっとー……昔から、変人でしたよ？ よくボヤ騒ぎを起こしてました。「この程度のことで騒ぐな」 とか、教師に大立ち回りしてました
三階 やっぱり、頭がキテたんですね、当時から
齊藤 ええ、当時から頭は良かったですよ
御行 はいはいはいはい！昔の芹沢実に素顔！そこら辺、詳しく！
蕪川 んん！盛り上がっている所、申し訳ないが、芹沢実の、 身辺の安全上に関わるので、その辺で謹んで頂けると
齊藤 あ、ごめんさい……
芹沢 ……あー、あー……蕪川さん？聞こえますか？
蕪川 はい、聞こえますよ
芹沢 うん、こっちも聞こえる
蕪川 では！改めて、ご紹介します！世紀の大発明家、芹沢実です！
芹沢 どうも、芹沢です……えーっと、見た顔、 知らない顔もいますけど……お？サイトー？
齊藤 久しぶり……
芹沢 ナツいな、サイトーか。元気にしてた？
齊藤 うん、元気
芹沢 それは良かった。蕪川さんのサプライズ？
蕪川 いや、私もさっきまで知りませんでした
大根 いやー、お初にお目にかかります！芹沢実さん？私、 大根優と言います
芹沢 初めまして。あー、サイトーの幼馴染の？
大根 大昔ですけどね
御行 え？え？大根さんと、齊藤さんは幼馴染？！
大根 まあ、はい
齊藤 ……本当に大昔、だけどね……
蕪川 ……できれば、そういうことは、 事前にお教え頂けると嬉しいのですが……
大根 いやー、オレっちも知らなんだのよ！まさか、 マコトちゃんがいるとはねぇ。あ、 マコトちゃんだと混乱しちゃうか？
芹沢 いいえ、呼び易い呼び名で構いませんよ……じゃあ、 サイトーは自力で見付けたんだ？へえ、やるじゃん？
齊藤 まあね…… 手がかりになりそうな情報は片っ端から見ていったから…… 運が良かったよ
波久部 すごい熱意ですね
齊藤 言いたいこと、あったから……
回線が乱れる。
蕪川 ん？……回線が……少し……お……
芹沢 蕪川さん？……あー、ホストが消えちゃいましたね？
大根 あらー、電波障害でしょうかね？
芹沢 さあ？どうでしょう？
三階 芹沢さん、質問があります
芹沢 ん？どちら様で？
三階 私、三階と言います。初めまして
芹沢 初めまして。それで、質問とは？
三階 どうしてハルポーを世界中に配布しようとしたのですか？ ハルポーの危険性に気付いていなかったのですか？確かに、 ハルポーの有用性はある面は認めます。しかし、 ドローンによる散布は明らかに早計だったのではないでしょうか？
御行 はいはいはい！私も気になってましたー！もっと、段階を踏んで、 取り組んでも良かったのではないでしょうか！
大根 そうですねー、お陰でおちおち外にも出歩けませんね～？いや、 別に批判している訳じゃあないんですけどね？私だったら、 ハルポーの特許でウハウハして余生を過ごすんですけどねー？ いやはや、俗で済みません、へへっ
芹沢 ……うーん、まあ、良いか。ハルポーの危険性、ええ、 最初から気付いてましたよ
三階 最初から気付いてた？気付いていながら、 ドローンでの散布を決行したのですか？
芹沢 はい、そうです
御行 それは！どうしてでしょうか！
芹沢 どうしてこんなことをしたかって？理由はシンプルさ。 誰も居ない街をオフロードバイクでかっ飛ばしたいからさ
三階 ……は？そんなことで？
芹沢 ……そんなこと？まあ、はい
三階 ふざけないでください。私は真面目に聞いています。 本当の理由は何ですか？
芹沢 いや、だから、言っているじゃない？もう一度言いましょうか？ 誰も居ない街をオフロードバイクでかっ飛ばしたいから。 これが理由です
三階 ……頭オカしいんじゃないですか？
芹沢 ……人類は数が増え過ぎた。 地球のリソースは限られているのにね？だから、 少しくらい減ったって問題はない。むしろ、長期的視点で言えば、 人類全体の種の存続は延びた。頭がオカしい？ああ、知っている。 十分に。いや、嘘を吐いた。まだ、不十分だ。 私は可能性を探求しているに過ぎない。 可能性を探求し続けた結果、人類は3分の1になった。 事実のみを見ろ、他の感情は不要だ
三階 不要？人間の感情を不要？何が可能性の探求よ。 あなたは人間について、何も分かっていない
芹沢 何が言いたい？
三階 あなたは間違いを犯した。事実を見なさい！ 誰も居ない街をオフロードバイクでかっ飛ばしたい？ 寝言は寝て言いなさい！
大根 煩わしい？天才は考えることが突飛だね～。煩わしい累積で？ ちょっと私には分からないわー、申し訳ないですけど
御行 すごい……ぶっ飛んでる……！「芹沢実はサイコパスであった」… …！間違いなく特ダネだ……！
芹沢 ……ああ、煩わしい……全く、その一言さ、きっかけは。 その一言、厳密に言えば、あなたたちやあなたたち以外の、 一言の累積、それが煩わしい
齊藤 ……煩わしいのが、きっかけ？
芹沢 （笑う）……そうさ。理由はシンプル、もう一度言おう。 誰も居ない街をオフロードバイクでかっ飛ばしたい。 私にとっては、重要なタスクだよ
三階 馬鹿げてる
回線の乱れが直る。
蕪川 ……ふー、ようやく直った……済みません、 何者かが侵入したようで……
芹沢 ……そうですか
波久部、蕪川の背後に現れる。
齊藤、三階、御行 え？
蕪川 え？……！？お前、どうして？！ここは……
波久部、無言で蕪川を刺し殺す
御行 と、と、特ダネだぁあ！
波久部 蕪川の拠点を制圧しました
芹沢 優秀だね？特殊部隊の方かな？
波久部 ドローンの生産工場は特定済みです。 あなたが構築したメインシステムももうじき止まるでしょう
芹沢 でしょうね？
波久部 後は、あなたを殺して、終わりです
三階 ！待って。話が違う！芹沢実は警察に引き渡す、 法の下できちんと罰を与える、そういう話でしょう！
波久部 そのフェイズはすでに過ぎています。先程、各国首脳級が会談、 芹沢実は死をもって償わせる、そう決まりました
三階 そんな……！相手が獣だから、こちらも獣になれと？ 人類が定めた、自由と平等の、平和の礎を、無視しろと？
波久部 上が決めたことなので。では、後で会いましょう、芹沢さん
芹沢 ええ、無事、五体満足でお会いできれば良いですね？
波久部、画面から消える。
芹沢 さてさて、どうやらここも危ないようだ。私も隠れようかね？
三階 芹沢実！出頭しなさい！
芹沢 出頭？なぜ、そんな？
三階 あなたは間違いを犯した！その罪は法の下、 裁かなければならない！罪を償うべきよ！
芹沢 い、や、だ
三階 この、ガキがっ！
芹沢 では、さようなら、またお会いできる日まで
齊藤 セリちゃん！
芹沢 サイトー、雨上がりに
芹沢、立ち上がって消える。
御行 おお……意味深な捨て台詞……！データ、良し！じゃあ、 私もこれで！特ダネ特ダネ♪
御行、バタバタと消える。
齊藤 ……雨上がりに……私、行かなきゃ
三階 待ちなさい
齊藤 ……何ですか？
三階 芹沢実の居場所に心当たりがあるようだけど、 相手は国際テロリスト、特殊部隊がすでに向かっている。恐らく、 その場で射殺は確実ね。厳戒態勢が引かれている上に、 ハルポーを散布するドローンもある。まず、辿り着けない。 万が一に辿り着いても、すべてが終わった後、何もできない。 ここは大人しく警察に任せてあなたは家で大人しくしていなさい。
齊藤 ……三階さんは、警察ですか？
三階 ええ、そうよ
齊藤 警察の……それはセリちゃんを、芹沢実を捕まえるのは、 敵だからですか？
三階 敵？違う。 私は自由と平等を尊重する人が安心して暮らせる世界を守りたいだ け。間違えた人間が正しい道に戻したいだけよ
齊藤 何が正しいか、間違っているか、どう判断するのですか？
三階 国際法の則って。そこに記された人類の規範に沿って。 芹沢実に罪を償わせる
齊藤 罪を償わせるって、それ、死刑でしょ？
三階 ……それが法の判断なら
齊藤 つまり、セリちゃんの敵ですね
三階 違う。私は芹沢実を救いたいだけ！
齊藤 なら、私の敵です
三階 あなた、さっき何分からないこと言ってるの？……良いから、 大人しく家でじっとしていなさい
齊藤 ……小学生の時
三階 はい？
齊藤 小学生の時、私、蝶々結びができなくて。 綺麗な輪っかを作りたいのに、スニーカーを履いたままだと、 固結び（かたむすび）になっちゃったり、 輪っかが縦になっちゃったりして、全然、可愛くなくて。 みんなはちゃんと、蝶々結び、できているのに。 私だけ全然できなくて……私ね、 部屋に練習用の運動靴を買ったの！自分のお小遣いを溜めて、 靴屋で一番安いスニーカーと紐を買って、 部屋ですっごい練習した。すっごい、練習してるのに、 どうしてもできなくて。 どうしてこんなに不器用なんだろうって悩んで。 お母さんやお父さんに泣きついたり、友達に相談したり、 したけれど、「そんなこと」って、「 そんなことは大したことない」って、みんな、 真面目に受け取ってくれなかった。中学生の時には、 紐のない靴を選んでいた。私の好みじゃないけど！本当は、 スニーカー、履きたかったけど、蝶々結び、できないし！…… ある日、学校の屋上に行ったの。色々と疲れちゃって。 気分転換したくて、屋上に行ったの。そこに実がいた。 今じゃあ世紀の大悪党とか言われているけど、実は、 一風変わった、普通の人で……雨上がりの空が、すごく青くて。 ちょっと昔話をするつもりで、蝶々結びができない話をしたの。 実は、笑わなかった。笑わずに「そうか」って言って。それから、 宇宙の話をし始めた。 何言っているかチンプンカンプンだったけど！（笑う）それから、 何日かして、実は私にスニーカーをプレゼントしてきた。 何の嫌がらせ？とか思ったけど！「 これをどうするかは君に任せる」、「 挑戦する者を笑う人間には中指立ててしまえ」、「 自分に正直であれ」、とか何とか……実は、芹沢実は、普通の人、 そして、私の友達。友達が困っていたら、助けるのって、 普通じゃない？
大根 クックック……
齊藤 ヤッちゃん？
大根 マコトちゃんは変わらないねー。そういう、思い詰めちゃうとこ。 好きだなー
齊藤 止めてよ。昔の私とは、違うんだから
大根 あら、冷たい。まあ、いいや。三階さん？ マコトちゃんはこの通り、言い出したら聞かないんですよ？
三階 大根さん、あなた幼馴染なのでしょ？ 引き止める義務があるのでは？
大根 と言ってもねー？zoomじゃあ、ほら、 声かけしかできないじゃあないですか？
三階 ……私は今から上と掛け合います。齊藤さん、 家で大人しくしていてください。それがあなたができる、 最善です……では、私はこれで失礼します
三階、一礼して消える。
大根 おお、怖……さて、マコトちゃん？
齊藤 場所は分かる……でも、どうやって行こう……
大根 おーい？マコトちゃーん？
齊藤 ……うるさい、何？
大根 あのね？特殊部隊がうろうろ、ドローンがうじゃうじゃ、 とっっても危ないのは分かってる？
齊藤 ……分かってる、でも、行かなきゃ。セリちゃんが待ってる……
大根 ……そんなマコトちゃんにー、ビッグなプレゼント！何と！ ドローンへの妨害電波による迷彩機能搭載の車輌を！フォー・ ユー！
齊藤 ……え？
大根 免許は持ってるよねー？裏山にこっそり隠してるから、 それ乗って、行っちゃえ！
齊藤 ……どうして、そんな……
大根 そりゃあ、優しい優（やさし）ですから？マコトちゃんは、 笑顔が一番似合うぞ！
齊藤 ……この恩は、必ず
大根 武士？ハハハ！いってっら～
齊藤、消える。
波久部、画面に現れる。
波久部 隊長
大根 んんー？
波久部 良いのですか？
大根 何がー？
波久部 齊藤真を芹沢実のところに行かせて
大根 もちろん。その方が都合が良いでしょ？
波久部 都合？
大根 芹沢実はとっても頭が良い。天才も天才、大天才。 これくらいのことは想定しているでしょ？なら、まず逃げられる。 そんな大天才が、マコトちゃんに、「雨上がりに」 とかマコトちゃんにしか伝わらないメッセージを送った。 芹沢実もマコトちゃんが大好きなようで？大天才なら、 ちょっとくらいの妨害、あっという間に片付けて、 マコトちゃんと再会しちゃうだろうね。でも、 いっくら大天才でも、世界中から逃げるのは一苦労さ。 だんだんジリ貧になる。そうしたら、本当に困ったら、 マコトちゃんは、俺に、電話する
波久部 ……齊藤真は、芹沢実の首輪、ですか？
大根 俺の評価は上がる、芹沢実はとっちめられる、 マコトちゃんは最後まで味方でいられる。 誰も損しない最高に都合の良いストーリーさ
波久部 感服します。流石、大根隊長です
大根 んじゃ、ドローン工場は任せたよ
波久部 はい
波久部、消える。
大根 ……ごめんねー、マコトちゃん。これも、 世界の均衡のためなのよっと……
大根、電源を切る。
２、後日談。
雨上がり、よく晴れた空。
誰も居ない街、静かな空間。
芹沢、齊藤を乗せて、 誰も居ない街中をオフロードバイクでかっ飛ばす。
二人の笑い声がどこまでも響き渡る、
了。
