ネガティブ方向にポジティブ!

このブログは詰まらないことを延々と書いているブログです。

【My life for me by me】-カフェ-

その5。

ここが私が言いたいことになる。

そのためか、3200文字、熱入ると長くなる。

 

 

5、カフェ。

 

 オーナー、立て看板を立てかけ、席を整え、カウンターへ。

 カランカラン、とカフェの扉を開く。

 瞳、ベッカム、シャケ、フジヤマ、頼子、席に座る。

 

オーナー  ご注文はお決まりでしょうか?

 

ベッカム  えー、私はブレンドを

 

フジヤマ  あ、私もブレンドで

 

シャケ  紅茶をお願いします……ひとみんは?

 

瞳  ……私もブレンドで

 

頼子  ……ソイ茶を

 

オーナー  ……畏まりました

 

 オーナー、カウンターへ。

 

ベッカム  ……えー、では、早速ですが。始めます

 

 ベッカム、咳払い。

 瞳、頼子、お互いにジリジリと対峙しながら両端に離れていく。

 シャケ、フジヤマ、顔を見合わせ、それぞれの陣営に合流する。

 緊迫した3つの明かりが、瞳陣営、頼子陣営、ベッカムを照らす。

 

ベッカム  では、シャケさんから

 

シャケ  はい!えー、ひとみんのお母さんは、ひとみんに内緒で盗聴器を付けていました!これは、えー、プライバシーの侵害です!それと、えー、下着泥棒とか、ストーカーをけしかけた疑いもあります!ひとみんはこれによって非常に、えー、嫌な気持ちになっちゃいました!良くないと思います!なので、えーっと……ひとみんは、 どうして欲しいの?

 

瞳  私に関わらないで。私と親子の縁を切って欲しい

 

頼子  瞳!何て事言うの!

 

ベッカム  静粛に、静粛に。えー、争点となるのは、盗聴器の件と、今までの厄介事の疑いの件、以上2点ということですね?この2点について 、フジヤマさん

 

フジヤマ  はい。えー、まず、盗聴器ですが、まだ年頃の娘が一人で暮らすのが心配になるのは親として当然ではないでしょうか?確かに、子どもの私物に盗聴器を仕掛けるというのは、あまり褒められたことではありません。しかし!あくまで、瞳さんの安否を確認したい、 そういう心情も汲んで頂けたい

 

頼子  待って。私、盗聴器なんて、知らないんですけど?

 

フジヤマ  え?そこから否定しちゃいます?

 

瞳  物的証拠が、あるんですけどぉ?

 

頼子  この人じゃないの?私に罪をなすり付けようとしている。汚らわしい……!

 

フジヤマ  ちょ、えー、いきなり背後から撃ちます?

 

瞳  あー、可哀想に、フジヤマ。折角、弁護しているのに……そういう他人を顧みないところが嫌いなんだよ

 

頼子  私は、あなたの親なのよ!あなたは私の子、そうでしょ?

 

ベッカム  静粛に、静粛に!

 

瞳  私史上最悪の事実だね

 

頼子  下着泥棒や、ストーカーもけしかけたとか……どうして、私を悪者にするの!

 

瞳  自分の胸に手を当てて考えてみなよ!

 

頼子  私はあなたの親なのよ!

 

瞳  二言目には、そればっかり!親だったら何しても良い訳じゃないっ て、何遍言ったら理解できますかぁ?

 

ベッカム  静粛に!静粛に!

 

頼子  この変な人たちの所為ね……私の瞳を返して!

 

ベッカム、シャケ  え?

 

フジヤマ  ちょっと、落ち着きましょう?

 

頼子  障らないで!……下らない、程度の低い人間と付き合うから、そういう妄想に取り憑かれるのよ!良いから、帰るわよ!(瞳の腕を掴 む)

 

瞳  (頼子の手を力一杯に振り払う)帰らない!

 

頼子  わがまま言わないの!どうするの?他に泊まれる場所、当てがあるの?

 

瞳  それは……

 

ベッカム  あー、お母様?

 

頼子  私は!あなたの!母親ではありませんっ!

 

ベッカム  いやー、これは失敬。えー、一応、もう、取ってあるんですよ?泊まる場所、ね?

 

シャケ  !うんうん!もう泊まるところ、もう抑えたよ!

 

瞳  ……ありがとう。そういうことだから

 

頼子  そこはどこなの?宿なの?

 

ベッカム  まあ、そうですね、宿、のようなものです。この近くですよ?ええ、あまり長居はできないのですけど、ええ、しばらくは、住まいの心配はしなくても、大丈夫です

 

シャケ  心配しなくて大丈夫です

 

頼子  ……なら、キャンセルしてください。その宿には泊まりませんので。瞳はこれから家に帰りますから

 

瞳  だから、帰らないって!言ってるだろうが!

 

ベッカム  一晩!一晩、とりあえず、気持ちの整理をしてから!火事の直後ですし?気持ちがね?昂っているでしょ?お互いに、ちょっと間を空けないと、冷静に、話し合いもできないじゃないですか?

 

シャケ  一晩、時間が欲しいです

 

 頼子、苛立ちながら、瞑目する。

 瞳、頼子に背を向ける。

 

頼子  ……瞳、明日、お父さんも連れて来るから。家に帰るわよ、良いわね?


 頼子、そのままにカフェを出る。

 店内に静かな音楽が流れる。

 オーナー、各種飲み物を持ってテーブルに置く。

 

オーナー  ……ごゆっくり

 

シャケ  あわわ……

 

ベッカム  なるほどー、これはー、なるほどー……

 

フジヤマ  ソイ茶、どうしましょう、かね?

 

シャケ  あ、私、飲む!

 

ベッカム  まあそれは……坂井さん?

 

瞳  ……ごめん、ごめんなさい……

 

ベッカム  謝らなくて良いですよ!坂井さんは、何も悪くないのですから

 

シャケ  そうだよ、悪くないよ

 

フジヤマ  ええ、何も悪くありません

 

瞳  ……昔っから、あの人は、私のやることなすこと、気に入らないんだ。あなたのため、あんたのことを思って。嘘ばっかり……昔、デパートにおでかけした時、すごく可愛い、水色のチュニックがあってさ。私、どうしても買いたくて。バイト禁止だーとか言われてたけど、先輩の親御さんに頼んで、保護者蘭を埋めて。コンビニのバイトをしてさ。一生懸命働いて、お金を貯めて、それで買ったんだ、チュニック。私にはちょっと可愛過ぎたけど。初めて自分のお金で買った、お気に入りで……あー、 あの日も雨が降ってたな。部屋に入ったら、クローゼットが開けられてて。私のチュニック、勝手に売られてた。あんたには似合わない、親に内緒でアルバイトをして買ったのも許せない、コンビニには電話したからもう行かなくて良い……運動会は怪我するからって参加させられなかった。風邪引いてしんどいのに親族の集まりで手伝わされた。仲良かった男の子に難癖つけて、距離置かれるようになった。あの人は、自分の都合が良い、お人形さんが欲しいだけ。他人との距離感が分からない、他人を顧みない……あの人は、変わらない、絶対に、あの人は……(項垂れる)

 

ベッカム  ……ふむ、家族の問題は、私たちではどうにもできませんね

 

シャケ  そうだね

 

フジヤマ  そうですね

 

ベッカム  他人を変えることも、まあ、無理です。変えられるのは、自分だけです

 

シャケ  変えられるのは、自分だけ

 

フジヤマ  世の真理ですね

 

ベッカム  つまり、この問題は解決しません

 

シャケ  解決しません

 

フジヤマ  迷宮入りですね

 

ベッカム  しかし

 

シャケ、フジヤマ  お?

 

ベッカム  解決しなくても、できることはあります

 

シャケ  できることがあります

 

フジヤマ  あるようです

 

ベッカム  坂井さん、ちょっとサプライズを仕掛けませんか?

 

シャケ  サプライズ!

 

瞳  ……サプライズ?

 

ベッカム  ええ、ちょっとした、サプライズ。きっと泣いて驚いてくれるでしょう

 

シャケ  びっくり仰天、目が点々

 

フジヤマ  驚き桃の木一本気

 

ベッカム  さあ、世を道理から外れて久しく、影の中でひっそりと過ごす私たちが、坂井さんにできる、ちょっとした悪戯の、その提案です

 

シャケ  小さい悪戯です

 

フジヤマ  些細な悪戯です

 

瞳  ……あの人に?

 

ベッカム  ええ、そうです

 

シャケ  その通りです

 

瞳  それって、何か、意味あるの?

 

ベッカム  意味?そんなの、ある訳ないじゃないですか

 

シャケ  意味なんて、ないない!

 

フジヤマ  無意味ですね、全く

 

ベッカム  でも、見てみたくありません?泣いて驚く顔を

 

シャケ  腰抜けちゃう姿を

 

瞳  (笑う)あー、ちょっと、うん、ちょっと見たいかも

 

ベッカム  ならば、そのお手伝いなら、私たちはできます。それで、どうします?

 

シャケ  どうします?

 

フジヤマ  どうします?

 

瞳  ……そうねー……やっちゃいますか?

 

ベッカム、シャケ、フジヤマ  やっちゃいましょう!

 

 ベッカム、シャケ、フジヤマ、飲み物をぐいっと飲む。

 瞳、じっとコーヒーを見て、ぐっと飲む。

 瞳、ベッカム、シャケ、フジヤマ、颯爽と出る。

 オーナー、時計を確認、立て看板を片付け、店を閉める。