2番目。
2、寂しい電信柱の下。(朝)
ゆるゆると昇る太陽が山々の間から顔を覗かせる。
ウサギ、昨日と同じ所から遠くに見える橋をぼんやりと眺めている 。
ウサギ あの橋まではどれくらいあるんだろう? ここからだと日が落ちる前には着くかな?そうだとして、この道を真っ直ぐに辿れば良いのかな?
……あそこには何があるんだろう?(心を踊らしながら)
トゲ おい、なーにボケッとしているんだよ?
トゲ、のそのそとウサギの下へ。
ウサギ 今日はあの橋に行こうと思って
トゲ んあ?あー、なんか、所々剥げているあの橋か?
トゲ、ウサギが見ていたであろう方向を見る。
ウサギ あそこには何があるのかな?
トゲ、一瞬キョトンとした後、暫くあーだのんーだの唸ったと思ったらひょいと顔をウサギに向けてニカッと笑う。
トゲ それは行ってからのお楽しみって奴さね
ウサギ ……そうね、行ってからのお楽しみね
ウサギ、フフッと笑って橋の方へ目を向ける。
トゲ、どこへ向かうか分からない雲のような目をしたウサギを見ながら、まだ朝の挨拶をしていないことを思い出す。間が悪さを感じながら、一呼吸を置いてすべきことはしようとウサギにもう一度声をかける。
トゲ ……あー、ウサギ、言い忘れてたけど……
トゲ、ウサギへ目を向ける。
モクタン、ニュ~っとウサギ、トゲの間に割り込む。
モクタン ボクの太陽に向かって、オッハヨー!
トゲ、なんで奴はこう朝から叫んでいるんだ?と言わんばかりに顔をしかめる。
ウサギ、トゲをちらっと見て返事をする。
ウサギ おはよう。モクタンさん
モクタン 嗚呼、ボクはなんて幸せなんだろうかっ!こんな目映い笑顔をこんな近くで見ることが出来るなんて!Oh、神よありがとう!!
ウサギ フフフ、相変わらずお世辞が上手ね
モクタン NO!お世辞じゃないよ。ボクは心から、良いかい、心から言っているんだよ!!(ズイッとウサギに詰め寄り、真っ直ぐに見つめな がら)
ウサギ、微笑みながらそんなモクタンの目を見つめ返す。
トゲ、モクタンの足を払い除ける。
モクタン、地面に倒れる。
トゲ よう、炭っカス。お、は、よ、う(仰向けになったモクタンを見下ろすように言い放つ)
モクタン なんだワニっ子、いたのか。気付かなかったよ
トゲ あー、いたよ。お前が蒸れた靴より臭いセリフを言う前からずっっとな
モクタン おいおい、ボクは美しいモノを美しいと讃えただけだよ?それを何だい?言えないからって僻んで(ひがんで)いるのかい?
トゲ ちげーよ、バカ。朝からうぜーって言ってんだよ
モクタン それを僻んでいるって言うんだよ?理解できないか。そうだよね、君は爬虫類だ。ろくに挨拶もできない可哀想な生き物なんだよね?
トゲ ……最初っから見てんじゃねーか。この陰険黒カビが
モクタン 君こそどうなんだい?ムッツリトカゲ
トゲ、モクタン、しばらくにらみ合った後、取っ組み合いを始める 。
ウサギ、優しい眼差しで見た後、そっと離れる。
ウサギ ……あの橋には何があるのかな?
メリーゴーランドの音楽が聞こえてくる。