6番目。
6、草の影の中。
モクタン、トゲ、道から横に逸れて視界が緑一色になる草のジャングルを抜ける。
モクタン、理由も言われずにただひたすらに押され続けられ、堪忍袋の緒が切れる。さっと振り返って、言い放つ。
モクタン 一体何をしてくれてるんですか!?いきなり体当たりをするは、私が苦労に苦労を重ねて見つけた雨除けをどこか遠ーくへ投げるは、 ウサギを独り残して反論も許されずにボクをここまで追いやるはで、もう我慢の限界です。誠心誠意謝って下さい
トゲ ……説明をせずにここまで押しやったことは謝るよ。ゴメン
モクタン、トゲがあまりに簡単に謝るものだから不安になる。
モクタン Ooh…今、私は世にもおぞましい体験をしました。まさかあの爬虫類が謝るなんて…あなたは何者ですか!?ワニっ子をどこかに消 してくれたのは嬉しいけど、迷惑だよ!
トゲ あ?意味分かんねーこと言ってんなよ炭っカス
モクタン なんだ本人か。あーそうか、さっきまでの日差しで脳が熱を出したんだな?それで今までにない行動を君にさせたのか。そうかそうか
トゲ ……こっちが素直に謝ってんのになんだその態度は?ケッ。まーいいや本題だ。雨除けのことだ
モクタン ほう、やはり雨除けについてですね?あ、私とウサギが身を寄せ合っているのに自分はずぶ濡れになるのが嫌だったと? なんて心が狭い!君はあの雨除けの中には入れないんですから、仕方がないじゃないですか?
モクタン、トゲが雨除けからどうしてもはみ出してしまう不公平さが嫌だったに違いないとほくそ笑む。
トゲ そんなことじゃねーよ、馬鹿。あの雨除け、雑誌だったよな?
モクタン ?ええ、そうでしたけど?
トゲ 中身は確認をしたのか?
モクタン はい。女の人が裸になっていました。
トゲ ……あー、なんだ先に謝っとく。蹴ってスマン。オリャ!!
トゲ、モクタンの腹めがけて飛び蹴りする。
モクタン、なす術もなく倒れるも、しかしすぐさま立ち上がって反論を仕掛ける。
モクタン 痛いです!なんて野蛮なんだ。考えるよりも早く手が出る脊髄反射だけで生きている爬虫類めっ!
トゲ 黙れノータリン。なんでそんなん持ってくんだよ?
モクタン ?なんでって、雨除けですよ?え、ボケが始まったんですか?困ったなー、ボクは君の介護なんてしたくないなー
トゲ ……あのな、ウサギは女の子だ
モクタン ええ、そうですよ。もっと言えば天使です
トゲ 雨が降って来たらあの雑誌を開く訳だ
モクタン そうなりますね。当然君はずぶ濡れ、ボクらは熱々です
トゲ じゃあ上を見上げたら裸の女がバーンと出てさ、ウサギがどう思うか分かるか?
モクタン モクタンさんて頼りになるわ、キュン。だろ?
トゲ 不正解だ、馬鹿野郎っ!
トゲ、もう一度モクタンに飛び蹴りをかます。
トゲの叫びが辺りに響き渡る。