朝6時、空に待ち針の丸い頭のような物体が浮かんでいた。
朝日に照らされて、留まり続けるその物体が不気味さを増す。
未確認飛行物体か、と恐れ戦いたが、よく見たら気球だった。
確認済みの飛行物体はふわり浮いている。
気付けば、もう数機の人が乗せれる風船が浮いているのが見える。
朝早くから空の散歩とは随分と優雅でございますね、と僻みから来る皮肉がつい口から零れて、一人っきりの車内を反響させる。
夜勤明けの清々しい朝の帰りに、ちくりと、楽しげな人たちが空を占拠している。
本当の所は、僻むほど今の生活を悲嘆していない。
ただ、何となしにあの待ち針に刺されて下界を眺めてみたいな、と考えたのは事実だ。
ふわり浮く気球の下をくぐり抜けて、さよならする。