Twitterでのコミュニティでまたまた企画を立ち上げた。
やったのが「架空読書感想文」だ。
まず、「読書会」がある。
事前に指定された書籍を読み、その書籍について感想を言い合う会だ。
「架空読書会」というのがある。
全員が事前に書籍を読んできた前提で、架空の書籍について感想を言い合う会がある。
以前、この「架空読書会」に参加して面白かったので、これの亜種をやりたくなったのだ。
「架空読書感想文」とはつまりは下記の通りだ。
全員が事前に書籍を読んできた前提で、架空の書籍についてコミュニティ内で感想を言い合い、その感想に出た架空の書籍の情報を元に、感想文を書く。
すごく面白かったが、まとめるのが大変だった。
大変だったから、早速、この架空読書感想文を載せる。
架空の書籍の読書感想文を書いてみた。
続きより、本文である。
2900文字越えの長文なので注意されたし。
読書感想文。
上の小枝の怠け者。
タイトル
「波消しブロックで会いましょう」
あらすじ
何もない島で、少女は「世界のすべて」に喧嘩を売った。
高校2年生のユミは何もかもにうんざりしていた。
顔は笑顔を貼り付けて、心の中で誰彼構わず噛み付いていた。
そんなある日、父がスリランカへと転勤するから、と家族全員で引っ越すことに。
抵抗空しく、ユミは海と空、それだけの何もない島で新しい生活を始める。
しかしそこで待っていたのは、日系人で自由人のリラ、気弱で嘘つきな少年ハル、モスト・パブのママ、守銭奴のババ・バクールという個性豊かな人達。
そして、何もない海岸線に似付かわしくない波消しブロックで出会った青年Aがユミを突き動かす。
「ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ!ワイにかかってこいや!」
果たして、ユミは「世界のすべて」に勝てるのだろうか?
最近、映画化された「波消しブロックで会いましょう」の原作を読んだ。
上巻、中巻、下巻からなる3部作で、作品自体は2010年とちょっと古い。
今回はこの「波消しブロックで会いましょう」の感想でも書く。
まず、色々と言いたい事があるが、たった一言でまとめるなら。
くどい。
この一言に集約される、されてしまう。
上巻がユミの日本での生活を描いている。
そして、中巻の前半でユミと父の喧嘩、後半でスリランカへの転校となる。
お気付きだろうか、なんと中巻の半ばまで日本での話しなのだ。
タイトルの「波消しブロック」が出てくるのは、下巻からだ。
それまで「波消しブロック」の「な」の字もない。
タイトル詐欺じゃないか、など考えてしまう。
主人公のユミの心理描写もくどい。
例えば、上巻の始めに玄関先で靴を履くシーンがあるのだが…
(以下、引用)
今日は右足から履こうか、左足から履こうか、どちらにしようかな?
昨日は右足から履いた。だから、左足からにした方が公平かもしれない。
いや、公平であることが必ずしも公正な訳でないな。
今日も右足にして、左足はまた今度にしようかな?
いや、「また今度」なんて不確かな未来に託すなんて、愚かなことだ。
不確かなことに託すくらいなら、左足にしよう。
よし、今日は左足からだ。
知らんがな、右でも左でもどちらでも好きな方から履けば良いではないか?
ユミはいちいち何かにつけて「どっちにしようかな?」と考えているのだ。
しかも作中、「右足から履くか、左足から履くか、どちらにしようか」と考えるシーンが6回も出てくる、くどい。
上巻、中巻のユミのくどい心理描写が続くので、へとへとになること請け合いだ。
そして、疲れた所に2000ページ超えの下巻で、心を折られる読者が多数現れるのも分かる。
映画では、転校前までの話しが15分くらいでまとめられている。
上巻から中巻半ばまでの話しが15分、それで問題ないことが、問題だ。
しかし、このくどさが癖になる。
私が最後まで読めたのは、この「くどさ」が欲する身体にされてしまったからだろう。
くどさを受け付けない人は、下巻から読めば良い。
あらすじに書かれている人物が登場するのは全員下巻からだから、むしろ下巻さえ読めば良い。
下巻から、怒濤の展開になる。
ユミが何かを考えるよりも、周りの人達がぐいぐいとユミを引っ張っていくのだ。
ユミのくどい心理を知っていると、この下巻の展開は痛気持ち良い。
そして、登場人物たちの台詞がいちいち格好良いのだ。
「残念でした、私があなたを助けちゃう、そこが十万億土の果てでもね」
___リラ
学校に馴染めずに部屋に引き蘢っていたユミ。
そこへリラが斧でユミの部屋の扉をぶち明ける。
唖然とした後、「もう、ワイのことはほっといてよ!」と言ったユミにリラが笑顔で上記の名言を言い放つのだ。
もう、リラ、好き。
こんなんされたら堪んないよ。
映画でもこのシーンは最高ですね、もう何度でも見れる。
「忘れ物はあるかって?ないわ、必要な物はぜんぶポケットの中にあるもの」
___モスト・パブのママ
パブに鍵を閉めているママに従業員のサジャが「何か忘れてはいませんか?」に対するママの貫禄の答え。
私は物にしても人間関係にしても持ち過ぎてしまうので、胸に刺さりましたね。
「必要な物はポケットの中にある」、日常生活で使ってみたい。
映画ではモスト・パブのママはM.D.さんだったが、嵌り過ぎてヤバかった。
もう、まんまモスト・パブのママだったもの。
お陰で私の頭の中ではモスト・パブのママの声は、M.D.さんになってしまった。
「馬鹿!どっちも大事、でもたもたしてたら、どっちも手に入らないわよっ!」
___モスト・パブのママ
ユミは青年Aに恋をしたのだが、リラも青年Aが好きなことを知ってしまう。
物の見方が美しく、新しい世界を見せてくれる青年Aとの恋か。
自由に生き、何度も助けられたリラとの友情か。
2人の間でユミは悩む訳だが、そんなユミにママが言った一言だ。
いや、本当に、そうだと感じる。
結句、どちらかを選ばなければならない、どちらも大事は通らないのだ。
「いいか、旦那は毎月4,9000ルピーきちんと手渡してくれる。毎月きっちり4,9000ルピー欠かさずだ。これがどれだけのことか、お前に分かるか?」
___ババ・バクール
守銭奴のバクールに引き抜きの話しが舞い込む。
給料は今の3倍と破格の値段を提示される。
しかし、バクールは「とても信じられないね」と言った後に続けて発言したのが上記の台詞だ。
意外と義理堅い所を見せてきて、私は結構グッと来たのだが、他の方はどうなのだろうか?
「あの波消しブロッグが砂で埋もれたら、海はどうなるのだろうね?」
___青年A
最後まで本名は分からず仕舞いで、かなりミステリアスな人物が青年Aだ。
特にこの質問に対する答えは示されていないが、ユミはこの質問から考え始め、「世界のすべて」と戦おうと決意するに至るのだから、青年Aは案内人的なキャラクターなのかもしれない。
因みに、父のスリランカでの仕事がこの波消しブロック移設なのだが、分かるのが下巻の終わり頃と言う。
因縁があったじゃないか、波消しブロック、もっと早い段階で打ち出しなよ。
さてさて、これ以上のネタバレは良くないから、この辺にしておく。
映画から入った人は、下巻だけで十分だ。
しかし、どうせなら、上巻から読んでみてはどうだろうか?
最後まで読み切ったなら、もう一度読みたくなる、そんなくどさが売りだからだ。
以上、私の読書感想を終える。