みんなが「いただきます」と言う前に「コーン!」と叫ばなければならない。
料理担当曰く最後の仕上げにコーンを乗せるのだが、忘れてしまうリスクがある。
そこで私が夕食直前に「コーン!」と言って思い出させないといけない。
アレクサのような役割だ。
やることがないのでスマフォを触って待つ。
寝間着に着替えて完全にオフモードだ。
夜も更けていく。
腹も空いてきた。
あー、コーンを発声まで永遠を待つ。
空き地にしている昨日の分の文章でも書いておこうか?
うだうだと考える。
欠伸を一つ、私が言葉を忘れて石になる前に早く夕食時になってくれ。
コーン、コーンと呟く。
誰も聞いてはいない。
か細い声はストーブの稼働音にかき消される。
腰が痛い。
軽くストレッチをする。
もういっそ寝てしまおうか?
暇をもて余して錆び付く私は息もぎこちない。
何でこんなに寂しいのか。
独りとはそういうものだ、と寂しさの頭を撫でる。
あ、そろそろお役目か?
声の調子を伺う。
スタンバイしておく。
みんなの輪の中へ、コーンと言って、始まる。