今日の5時に帰宅する。
小豆島で買った昆布の佃煮を白米で食べながら、後悔する。
この佃煮、もっと買えば良かった。
甘しょっぱさが絶妙で、ご飯が進む。
今度、買う機会があれば、3袋は買おう、と決意する。
夕方17時頃まで寝て、銭湯に出かける。
その後、 20時からオープンマイクに出る。
毎回、新しい発見と疑問が見つかる。
考えをまとめて、後で書く。
これで3連休は終わり。
明日の夜から、また普通に戻る。
憂鬱と愉悦がブレンドされた余韻に浸りながら、夜が更ける。
夜中の2時、私は矢も盾もたまらず、走り出した。
行こう、と決めていたのに、あれやこれやの諸用で1日を潰してしまった。
折角の3連休の1日を潰してしまった、そのことが真夜中の狂走へと私を駆り立てた。
高速道路を西へ西へ走り続けた。
6時間、ただ走った。
そして、フェリーに乗り、バスに乗り、遂に辿り着いた。
私は今、小豆島の二十四の瞳映画村に来ている。
かれこれ11時間、長野県から香川県に属する小豆島まで来た。
冷静になってきた。
ちょっと、馬鹿なことをした。
しかし、後悔はない。
八日目の蝉が、地面に落ちる前に見た海のような、清々しい気持ちだ。
一頻り、写真を撮ったら、長野県に戻る。
もちろん、11時間をかけて、である。
古い石油ストーブを点火するのに、マッチを擦る。
マッチ箱の横のざらざらは、マッチを擦った跡が幾重にも、白い尾を引いている。
縁のまだマッチを擦っていない部分に、マッチの頭を慎重に当て、手のスナップで一気に擦る。
白い煙を瞬き、ぼっと火が着いたマッチ棒を、石油ストーブの燃焼筒の下にある芯にさっと点火する。
そっと燃焼筒を置いて、赤くなるか確認する。
ゆっくりと赤くなる燃焼筒を見て、一先ず、安心する。
手元に残った、泥んこになった子どものような真っ黒な顔をしたマッチを、空き缶の中へと入れる。
からん、と音を立てて、同じように底にいる黒い顔のマッチたちに、新入りは挨拶する。
元は同じ赤い顔のマッチたちは、苦労話で花が咲くことだろう。
今日、私は母に連れられて、新しい石油ストーブを買った。
古い石油ストーブがたまに不燃焼して、目から涙が出るくらい、きつい匂いを発するから、買い換えすることになった。
今度の石油ストーブは、電気の力で着く。
もう、マッチを擦らない。
新しい石油ストーブを、部屋の片隅に置くと、からん、と音がした。
足元を見ると、倒された空き缶から、黒い顔のマッチたちが、我先にと飛び出していた。
空き缶の安寧の底から、急に降って湧いた騒動に、野次馬のように群がる黒い顔のマッチたちに、苦笑する。
腰をかがめ、一つ、一つ、空き缶の底に落としていく。
からん、からん、と音を立てて、元いた場所に戻っていく。
これから、彼らは何を話すのだろうか?
心配せずとも、彼らはもう、用済みだ。
安寧の底で、好き勝手喚いて構わないのだ。
君たちは何も心配しなくて良い、そう呟く。
からん、と音がなった。
その音が何処か悲痛に感じた。
まだやれる、そう空き缶の底から叫んでいるのが、いるのかもしれない。
古い物は、捨てられていく。
何時までもそのままにできない。
だが、せめて、一時は思い出したい。
あの黒い顔のマッチたちの、からん、とした音を。
いつもより3時間早く帰宅できた私は、迷わず布団に潜り込んだ。
貴重な休眠の延長だ、無駄にはしない。
だから、いつもより3時間長く、寝た。
毎回、これくらい早いなら、良い。
私は、お金よりも、寝る時間が欲しい。
お金が大事なのは重々承知しているが、それでも、寝る時間がすこぶる欲しい。
次、生まれ変わるなら、コアラが良い。
24時間の内、22時間は寝ていられるから。
20時間も寝られるナマケモノでも良い。
もし、人間に生まれ変わっても、大富豪の親が良い。
働かなくても、お金に困らず、寝ていられるから。
ノリで生きていける国でも、この際、良い。
もっとだ、もっと私を寝させてくれ!
目を覚ませば、勝手に料理ができていて、洗濯物が折り畳まれていて、ゴミが分別できていて、部屋に掃除機をかけ終えていて、冷蔵庫のマヨネーズが補充されていて欲しい。
次いでに、私の代わりにトイレで排泄したり、浴室でシャワーを浴びたり、ご飯を食べたり、皿洗いと棚戻しと麦茶の補充をしたり、歯磨きと髭剃りと整髪に、着替えと仕事の用意をしてくれたりすると助かる。
極力、起きている間は、楽したい。
嗚呼、我が布団に、恋い焦がれる。
今日も早く帰れるだろうか?
起きながらに、夢を見る、1月9日かな。