桃太郎の童謡を取っ掛かりに考える。
童謡、子ども向けに作られた歌。
親しみ易い音楽と歌詞で作られている。
その童謡に「桃太郎」の童謡があるのはご存知だろうか?
歌詞は以下の通りである。
桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけたキビダンゴ
一つわたしに 下さいなやりましょう やりましょう
これから鬼の征伐に
ついて行くなら やりましょう行きましょう 行きましょう
あなたについて どこまでも
家来になって 行きましょうそりゃ進め そりゃ進め
一度に攻めて攻めやぶり
つぶしてしまえ 鬼が島おもしろい おもしろい
のこらず鬼を攻めふせて
分捕物(ぶんどりもの)をえんやらや万万歳 万万歳
お伴の犬や猿キジは
勇んで車を えんやらや
かなり過激な歌だ。
私は、前半の「♪行きましょう」までは知っていたが、「♪そりゃ進め」からの進撃は知らなかった。
「つぶしてしまえ」とか「おもしろい」など、桃太郎のサイコパスな気質が見え隠れする。
漫画「ピーチボーイリバーサイド」の桃太郎像に近い印象がある。
そんな「桃太郎」の童謡に、私はある疑念を抱いた。
キビダンゴに対して、鬼が島への征伐参加は、労働の提供の対価として釣り合っていないのではないか?
おそらく日本本島から数kmは離れた島に「鬼が島」があるのだろう。
時代背景に室町時代から江戸時代ではないか、とWikipediaにあった。
当時、追放よりも重く、死罪の次に重いとも言われた刑として「島流し」がある。
室町時代の中期から末期には、落ち武者狩りがあって命の危険があり、実質、死刑と同じ機能を有していた。
この点から、「鬼が島」に行く事自体、命がけなのだ。
その上で、「征伐」である。
「鬼が島」の名前から、鬼の本拠地ではないだろうか?
時代背景から見ても、相当な悪党が群雄割拠しているイメージがある。
酒呑童子や茨木童子のような凶悪な鬼がひしめいている、そんな場所に攻め込む訳だ。
命が幾つあっても足りない。
その鬼が島への征伐参加の報酬が、キビダンゴ1つである。
日本一のキビダンゴだとしてもだ、キビダンゴ1つだけで命をかけられるものだろうか?
しかも、「家来になって」と言っている。
対等な立場ではなく、自ら仕える立場になると宣言しているのだ。
可能性を考える。
1つ、「鬼が島への征伐」を理解していなかった説。
言われた提示の内容より、目先のキビダンゴに目を奪われ、「何か「おにがしま」まで着いて行けばもらえる?なら、行きます!」と安直に飛びついただけではないか。
何せ、野生の動物である、まさか、死に物狂いで戦わされるとは考えもしなかったのではないか。
可哀想に、最後には重い金銀財宝が積まれた荷車をエンヤラヤと運んでいる訳です。
キビダンゴを貰うために、鬼の征伐に財宝の運び出しまでさせられている。
ただ、「勇んで」とあるので、嫌々やっているようではないのが救いか。
何れにしても、何も知らない動物を酷使するとは、桃太郎はブラック企業の社長か?
2つ、最初から、桃太郎に着いて行くことを狙っていた説。
犬、猿、キジがもし話しかけなかったら、桃太郎は単身一人で「鬼が島」に行くつもりでいた。
そして、事実、「のこらず鬼を攻め伏せて」いる。
桃太郎の放つ危険な気配を野生の動物が見抜けないのか?
いや、強き者であることを見抜いた上で、話かける話題として、キビダンゴをくださいと言った。
桃太郎も、野生の動物たちの魂胆を見抜いて、仕掛ける。
犬、猿、キジは感服し、平身低頭で桃太郎の家来へと喜んでなった。
強い者に着いて行く、昭和のヤンキーのようだ。
3つ、キビダンゴの報酬は命をかけるのに等しい説。
食料が手に入るのが難しい時代、キビは貴重な食料だ。
それは、人間に限らず、野生の動物にとっても、厳しい自然の中、生き残るためには必要だ。
犬、猿、キジは座った目で、「キビダンゴを1つください(威圧)」と言ってきた。
しかし、桃太郎は、「鬼の征伐について行くなら」と切り返す訳だ。
桃太郎の立場で言えば、キビダンゴを手渡せば、最悪飢え死にする、地獄への一本道だ。
お前、命かけられるのかよ?と桃太郎は問うているのだ。
犬、猿、キジは桃太郎の眼光と決意にハッとし、肝を据えて「行きましょう」と応じる。
鬼が島の描写から、指定暴力団の頭と幹部のようなやりとりが伺える。
4つ、キビダンゴに中毒性の何かがある説。
命を落とすかもしれない道中である。
普通、まともな精神なら、一歩も前へ進まない気がする。
しかし、歌詞にあるように「♪エンヤラヤ」、「♪万々歳」とノリノリで鬼の征伐をしている。
そして、この歌詞、犬、猿、キジがキビダンゴをねだる所から始まる。
もし、すでにキビダンゴを犬、猿、キジが食べた後だとしたら…
つまり、キビダンゴには気分が高揚して可笑しくなる成分が含まれている可能性がある。
全員、ジャンキーである。
この説の怖い所は、キビダンゴを持たせたのは、おばあさんという点だ。
おばあさんは桃太郎に恒常してキビダンゴを食べさせていた、かもしれないのだ…
以上から、私は思い描く。
あえて、言い切る。
桃太郎は、鬼よりも怖い鬼だ。
どう思考しても、桃太郎の反社会性が出てきてしまう。
よく考えてみたら、脇差しで鬼を征伐するほどの武力は、おじいさんおばあさんの仕込みか?
4つ目の説から考えても、桃太郎の育った環境が悪かったのかもしれない…
童謡は意味を考え始めると、怖い。
桃太郎も例外に漏れず、怖い。
いや、これは童謡の桃太郎だ、本での桃太郎はまた別だ。
良かった、怖い桃太郎は私の作った幻影だったか。
………幻影であるとしよう、そうしよう。