私の立っている地表から30度上空に三日月が浮かんでいる。
何だか気分が良いので、自動車の窓を開け放つ。
温い空気が押し出されて、ほんのり湿った空気が出入りする。
鎧のような骨をまとった虫が時速60kmでぶつかってくる。
山から、川から、羽を摺り合わせた虫たちの合唱が聞こえてくる。
耳を傾けなければ聞こえない合唱を静かに鑑賞する。
自意識が肥大したバイク乗りが私の鼓膜をつんざく。
思わず顔をしかめてしまう。
帰ったら耳かきで垢をこそぎ取らなければならない。
じんわりと汗をかく。
また山から、川から、虫たちの合唱が聞こえてきた。
さっきのことは忘れてしまおう、何だか気分が良いのだから。
私の立っている地表から30度上空に三日月が浮かんでいる。
山から、川から、羽を摺り合わせた虫たちの合唱が聞こえてくる。
夏、夜、私の折り重なったとある一幕だ。