朝8時、私は実家に居た。
母と父と私はゆったりと朝食を摂っていた。
常時着けっ放しのテレビから、福山雅治さんが出て来た。
相変わらず、イケメンだな、とカップラーメンをすする私。
福山さんは軽快にMCとトークをしていて、イケメンだった。
そんなイケメン福山さんが視聴者のメッセージの募集で、「息子から「ババア」と言われたことがある人」という質問をしていた。
イケメン福山さんによれば、自身のラジオ番組で思春期の息子から「ババア」と言われ泣いたという葉書が届き、 その時期はそういう態度を取るよね、と言っていた。
イケメン福山さんも「ババア」と言ったことがあると仰っていた。
ハンサムで性格も良いであろう福山雅治さんでさえ、思春期には母親に向かって「ババア」と言ったということが、少なからず驚きだった。
私は母親に対して「ババア」と言った記憶がない。
その場にいた母に「「ババア」と言ったことってあったっけ?ないよね?」と聞くと、母は「言われたことない」と肯定した。
ふと、私は母に「そう言えば、「ババア」と言ったことある?」と聞いてみた。
すると、母は「言ったことなどない。そんなことを言えば、蔵に入れられた」と否定した。
次いでに父に同様の質問をしたが、母と同じく「言う訳ない。そんなことを言えば、浅間のおじさんにどやされる」と否定した。
母はそこで亡き父方の祖母が「(父が)今まで「母さん」と言っていたのに、家に帰ったら「おふくろ」と言われてびっくりした」話を披露した。
思春期の頃の父は、周りが「おふくろ」と呼んでいるのに、未だ「母さん」と呼んでいたことを馬鹿にされたのが原因らしい。
その後、浅間のおじさんに「稼いでもない癖に「おふくろ」とは何事だ!」と怒られて、呼び方を元に戻したとのこと。
流れで、私の姉と妹について聞いてみたが、やはり両姉妹も「ババア」と言ったことはないとのことであった。
姉は思春期に一度、父に対して何かしら暴言を言ったらしいのだが、母が「そういう口の聞き方をするのだね?なら、高校の支払いは全部自分でしろ!」と怒ったところ、「お母さーん、お母さーん」と泣いたらしい。
母はそんな姉の手のひら返しに笑いを堪えながら、必死に毅然とした態度を崩さなかったらしい。
私も思わず、「姉、弱っ!」と言ってしまった。
ただ、母に怒られるなんて我が家では滅多にないから、姉の動揺した気持ちも分からなくもない。
こうして、両親の聞き取りをすると、どうにも不思議で仕方がなくなる。
あの、イケメン福山さえ、「ババア」と言う、思春期。
どうも、我が家の血筋なのか、環境なのか、「ババア」と言う言葉を誰も言っていない。
最早、「思春期は「ババア」と言うもの」という創作ではないか?と疑う。
穏やかに朝食を済ませ、世の中と我が家の違いに困惑しながら、席を立った。
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