空の底から上を見上げながら歩く。
遥か天上の表面は遠い。
空の底で息を深く、深く吸う。
藍色の空は夜の顔にピッタリだ。
太陽の光がこの空の底から消えていく。
私の後ろはまだ昼で、私の前は藍色の空だ。
天上の表面から空の底は見えるだろうか?
幾つもの光り輝く目玉が連なって見えるだろうか?
その目玉の直ぐ横に、藍色に染まった私が歩く。
私たちはこの空の底でしか生きられない。
僅か8000Mの山の上でさえ、息をするのも困難になる。
もっと上に飛べるけれど、そこから先は人の住む場所ではない。
それでも賢い人たちは馬鹿なことを考える。
天上の表層に船を浮かべて、人を住まわせようとしたりしている。
天上に浮いている月の底で建築しようとしたりしている。
馬鹿な私は的外れなことを考える。
空の底の深いところで、こぽこぽと空気を吸う。
空気は凛としていて、藍色の味がした。
空の底で生きている大多数の人たちは、このまま藍色に染まっていくだろう。
少数の賢い馬鹿な人たちは、空の底を忘れてしまうだろうか?
いや、例え土星の輪の中でジルバを踊っていたとしても、この空の底の記憶は彼らを呼び覚まし、何度でも地球に戻って来させるだろう。
空の底から上を見上げながら歩く。
遥か天上の表面は遠い。
空の底で息を深く、深く吐く。
ここは空の底、藍色の夢、私の生きる土の上を今日も歩く。