ネガティブ方向にポジティブ!

このブログは詰まらないことを延々と書いているブログです。

1020(さようなら、鈍色の雲の群れよ)

鈍色の魚のような雲の群れが東の空に浮かんでいた。

川に薄氷が張っているようなリバーブルーの空を、自由に、堂々と、雲の群れが浮かんでいた。

昼の名残りは星々が拾い集め、雲の群れは夜の衣を纏い始めていた。

 

雨と雨の合間、気持ちの良い風が私の顔を、肺を、心臓を、その内部深くまで通り抜けていった。

この風は、あの雲の群れの息吹きだろう。

数年を共に歩いたボロ靴に空いた穴からも、雲の群れの息吹きは通っていった。

 

今、この瞬間だ。

頭蓋骨の内側で銅鑼が鳴り響く。

今、この一瞬が、すべてだ。

 

今だ、今なのだ。

この瞬間、この一瞬、この刹那。

今、今、今なのだ。

 

大きく息を吸い、止めて、吐いた。

雲の群れは弾むように軽やかに、悠々と、リバーブルーの冷たい空を進んでいた。

さようなら、今よ、この瞬間よ。

 

いずれ私もあの空の底に沈むだろう。

その時に、また出会える奇跡を。

生きている内には、これが最後に違いなかった。

 

鈍色の魚のような雲の群れが東の空に浮かんでいた。

川に薄氷が張っているようなリバーブルーの空を、自由に、堂々と、雲の群れが浮かんでいた。

私は履き慣れたボロ靴でずっと暗くなった道に、一歩、踏み出した。