朝、皆、それぞれが収まる場所へ向かっている。
そうして、収まった場所でそれぞれ自分の役割を演じる。
その様子を横目に、私はすれ違うように借家へと帰る。
私は私の役割を演じ終えて、くたくたになっている。
玄関を開け、衣服を脱ぎ捨て、放ってあった寝間着をのろのろと着て、羽毛布団にくるまる。
くしゃくしゃになっている毛布や羽毛掛け布団の端を両手に持ち、足をばったばったと動かして、掛け布団の内側から皺を伸ばす。
足先から首まで丁寧にくるまるように伸ばしたら、ようやく一息だ。
枕元に置いたスマートフォンを手に取り、自分の熱で布団の中が温まるまで、記事を書いてみる。
欠伸をする度に、目から涙が一粒出て、身体が早く寝ろと急かす。
もう少し、もう少しと粘ってみるも、気付くとスマートフォンを叩いている人差し指が止まっている。
今頃は他の皆は、それぞれが自身の役割を全うしているのだろう。
そうして、くたくたになって、夜にそれぞれの収まる場所へ帰るのだろう。
私は、それを横目に、私が今収まっている場所へ向かうだろう。
私が羽毛布団にくるまっている間にも、くたくたになるまで目一杯動いている人たち。
皆それぞれが夢を見ないほど深く寝ている時、私はくたくたになるまで動く。
代わり番こでブランコに乗るような、世の中。
「帰りましょ」と言って皆一斉に帰ったら、どうなるのだろうか?
誰も漕がないブランコが、風に吹かれて揺れるだけ。
ぎいぎいと誰も居ない公園でブランコの軋む音が響くだけ。
社会がどうとか、世界がどうとか、よく分からないが、多分、何とかなると、根拠のない自信はある。
遠くで誰かが呼んでいる。
ブランコの順番が来るまで、お呼ばれされることにしよう。
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