私に転機はない。
「転機」、それは人生や価値観が変わった出来事で、それ以前と以後を分ける瞬間だ。
人生は長い、あの瞬間が私の転機だった、と述懐することはあるやもしれない。
しかし、私に転機と呼べるような特別な瞬間は未だ訪れていない。
齢30の私の人生で、驚嘆すべき事柄は幾つかあった、とは言っても良いかもしれない。
学校の入学卒業や冠婚葬祭など、節目を指折り数えて、「転機」とする人もいるだろう。
しかし振り返れば、私の本質は、30年間ずっと同じだ。
私の生き方が変わった訳ではない。
私の価値観がアイデンティティが確立した時期から今まで変わったとは感じない。
のっぺりとなだらかな平野のような人生、に私の陽炎がぼんやり映る。
過去を振り返って、私は何を考えるのか。
見えてくるのは、「変わらない」ことへの執着か、絶望か。
あの時、私はどうあるべきだったか?