西に夕陽が沈みゆく。
地平には赤紫の雲が、天空には明るい水色の空がある。
その境目、界面に柔らかいアイボリーの層があり、赤紫の雲と水色の空を見事に分け隔てている。
強く鋭い西日が私の網膜に刺さる。
自動車のサンバイザーを開いて、光を遮る。
キラキラと輝く光の粒は次第に弱まり、代わりに外灯の光が強くなっていく。
ガードレールの茶色い錆びは、夕陽の中で色濃く映える。
補修途中のコンクリートのひび割れの1つ1つは、より深く傷を抉られる。
ススキが影に手招きして、刻一刻と夕から夜へと模様替えをしていく。
ハンドルを握る左手の甲に青い血管が浮き出る。
夕陽に向かって真っ直ぐ走っていて、郷愁に駆られる気がする。
あの錆びもあの傷も、ぼやけた空のような思い出と重なるからだろう。
西に夕陽が沈みゆく。
私の人生でこれまでに1万回以上、これからも1万回以上、同じように。
西に夕陽が沈みゆく。
夕陽の群像を見送った、休日初日かな。