落とし穴、落として、落とし穴。
私の愛しい我が子の首が堆くウズタカク積まれている。
誰がアノ子の首を落とした?
転がり落ちて、落とし穴、落として、落とし穴。
私の恋しい恋人の手首がぐずりぐずりと積まれている。
誰がアノ人の手首を落とした?
山は真っ白、空も白く、息も白い。
なのに私の足下は黒い黒い染みしかない。
落とし穴、堀ったのは誰、落とし穴。
嗚呼、そうか、この穴は、呪われている。
急き立てるように、無自覚に無邪気に無責任に急き立てる。
誰がアノ穴を掘ったのか?
答えはずっと私の足下に。
誰がアノ子の、誰がアノ人の、誰がアノ穴を。
ごろん、と落ちた、私の足下へ。
落とし穴、落として、落とし穴。
黒いと思った染みは、よく見れば、赤かった。
誰も救われない、赤い赤い染みだった。
山の白さよ、空の白さよ、息の白さよ。
堆く、ウズタカク積もり給え。
ぐずりぐずりと積もり給え。
そして、染みが見えなくなって、忘れてしまおう。
春まで、春までの間だけ。
春になれば、白い白い纏いは。
落とし穴、落として、落とし穴。
次の冬が来るのを急き立てて、待つ。