ネガティブ方向にポジティブ!

このブログは詰まらないことを延々と書いているブログです。

【皮と骨とが剥がれる音】序盤の終わり。

序盤の終わり。

(ネタバレしないようにするの、大変…)

 

 

3、(回想終わり)皮剥の館、内部。

 

照明、背景薄暗い黄色。

音響、振り子時計の音。

 

小夜、雨羅、ノエル、仁科、上手から舞台中程へ。

 

ノエル「わあ……!すっごい素敵……!」

仁科「なんか……寒々しい(さむざむしい)な……」

小夜「妙ね」

雨羅「ああ、妙だな」

ノエル「?何がですか?」

小夜「振り子時計が動いている」

雨羅「(物を指でこする動作)埃がない」

小夜「そもそも、施錠されているはずの館にすんなり入れた」

雨羅「つまり」

小夜「振り子時計を動かし、掃除もして、招き入れようとする誰かがいる」

ノエル「それって……掲示板にここの噂を書いた人?」

小夜「でしょうね」

仁科「え!?ってことは、1億円もマジ?」

雨羅「そういうこと、になるのか?」

小夜「書いた人が同一人物であるなら、ゲームをするために館に招待(しょうたい)した、まあ、筋は通るわね?」

仁科「おっしゃ!俄然(がぜん)やる気になってきた!」

ノエル「もう、現金(げんきん)なんだから」

仁科「で、どんなゲームなんだ?」

雨羅「さあ?」

仁科「さあ、って……?」

ノエル「ゲームの内容については書いてなかったの」

雨羅「だから、分かんない」

仁科「ええ……?じゃあ、どうすんのさ?」

雨羅「まあ、館の何処か(どこか)にはいるだろうから、探せばいるんじゃね?」

小夜「その必要はないみたいよ?」(下手側に指差す)

雨羅「(下手側を向く)ん?ああ、そうみたいだな」

 

九十九、市ヶ谷、下手から下手側前へ。

照明、九十九にスポットライト。

音響、振り子時計の音をフェードアウト

 

ノエル「(市ヶ谷を見て)うわあ……」

仁科「(市ヶ谷を見て)キモ……」

 

市ヶ谷、にやっと笑う。

九十九、正面を向く。

 

九十九「ようこそ皮剥の館へ、人間共!」(高らかに)

小夜「あなたがゲームの主催者(しゅさいしゃ)?」

九十九「如何にも(いかにも)!如何にも!私が件(くだん)の掲示板にこの館の噂を載せ、君たちに世にも恐ろしいゲームへと誘う(いざなう)者にして、皮剥の館の主(あるじ)、九十九一だ!君たちには私のゲームに参加してもらう。もちろん、拒否(きょひ)することはできない!」

小夜「あら、まだゲームに参加するなんて言っていないわよ?」

九十九「クックック……戯れ言(ざれごと)を。山奥深く(やまおくふかく)にあるこの禁忌(きんき)の館に自ら(みずから)の足で踏み入れておいて、無事に帰れるとでも?禁忌に触れた者には、相応(そうおう)の対価を、罰を与えねばならない。そうだろう?」

雨羅「ずいぶん勿体ぶった(もったいぶった)言い方するな……」

ノエル「わあ、雰囲気たっぷりですね!館の主って感じがします!」

雨羅「あ、キャラ作ってるってことか」

仁科「……ゲームクリアしたら、本当に1億万円貰える(もらえる)のか?」

九十九「んん?浅ましい質問だね?そんなことが気になるか?」

仁科「いや、普通に気になるところでしょ……」

九十九「クックック……」

 

九十九、市ヶ谷に目で合図する。

市ヶ谷、下手へ一旦(いったん)行き、トランクを持って現れる。

 

九十九「ああ、無事にこの館から出られた証し(あかし)には、賞与(しょうよ)として贈呈(ぞうてい)しよう!」(市ヶ谷、トランクを開き、1億円を見せる)

仁科「おおお……!」

ノエル「え、本物?」

小夜「いいえ、新聞紙で嵩増し(かさまし)しているわ」

雨羅「何で言い切れるんだよ、本物かもしれないだろ?」

小夜「なら、あれが偽物か本物か、確かめましょう?そのトランクを私に寄越して(よこして)?一度家に持ち帰って一枚ずつ念入りに確認するから」

雨羅「ねこばばする気満々じゃねーか」

小夜「失礼ね、確認できたら返すわよ。ただ、念入りに確認するから、時間はとっっってもかかるわ。100年くらい待って頂戴(ちょうだい)」

雨羅「ねこばばする気満々じゃねーか」

小夜「だから、返すって言っているじゃない、あ、でも、市場で使えるかのテストもするから、返すときにはほんの少し目減り(めべり)しているかもしれないけど。それは調査費ってことで」

雨羅「もうねこばばするのを隠す気もねーじゃねーか」

仁科「おっし!俺はやるぞ!」

ノエル「……ねえ、順平……大丈夫かな……?」

仁科「大丈夫、大丈夫!俺、脱出ゲーム、得意だから!俺に任せな!」

ノエル「……うん、順平に着いていくね?」

仁科「必ず、館から脱出しような」

ノエル「順平……」

仁科「ノエル……」

九十九「(仁科とノエルを一瞥(いちべつ)して)そちらの二人は覚悟を決めたようだが、お前らは、ただ怯えたまま館に囚われるつもりか?私はそれでも一向に(いっこうに)構わないのだが?」

小夜「さあ、どうしようかしら。ねえ、雨羅?」

雨羅「あ?そりゃあ……参加で良いだろ?」

小夜「パン食い競走に?」

雨羅「ちげぇよ、あいつのゲームにだよ」

小夜「だから、パン食い競争でしょ?」

雨羅「何でパン食い競走一択なんだよ。別のゲームかもしれないだろ?」

小夜「私、メロンパンを狙う(ねらう)」

雨羅「分かった、お前、腹減ったんだろ?」

小夜「お腹と背中がくっつく、30秒前よ」

雨羅「結構な空腹じゃねーか。(ポーチからチョコレートを出す)ほれ」

小夜「(チョコレートを受け取る)ありがとう、死ぬかと思った」

雨羅「死にそうになるほど腹が減ったんなら、もっと早く教えてくれ」

小夜「カツ丼が食べたい」

雨羅「今じゃねー。仕事が終わったら、食いに行くぞ」

小夜「そうね、仕事が終わったら、食べに行きましょ?」

雨羅「おう」

小夜「私たちも参加するわ」

九十九「そうか、そうか。ありがとう……」

 

九十九、指を鳴らす。

音響、扉、窓が一斉に閉まる音、館が軋む音。

照明、中央奥を照らす。

大道具、中央扉が開く、中央奥に死体の山。

 

仁科「何何何!?!何がお、起きてるんだよっ!?」

ノエル「え、演出にしては、こ、凝ってる(こってる)ね……匂いまで……」

九十九「ん?演出?何の話だね?」

ノエル「え?ゲームのオープニングでしょ?」

九十九「クックック……私は嬉しいよ、君たちが本当に愚かで!演出?オープニング?そんなものはない!」

ノエル「え?どういう……?」

九十九「ああ、可哀想(かわいそう)に。まだ現実が理解できないようだね。ほら、よおく見て?その山を。よおく……」

仁科「え?……これ、まさか、嘘だろぉ……」

ノエル「え?何?え?」

仁科「本物だ……」

ノエル「え?」

仁科「本物の、死体だ……」

九十九「エンディングだよ!君たちが死んで、あの屍(しかばね)たちとトモダチになって、ハッピーエンドさ!クックック……ハハハハハハハハ!!」

仁科「いやいやいや、ガチのキチガイじゃん。ヤバいって」

ノエル「え?え?嘘でしょ?ゲームだよね?え?何これ?え?」

小夜「ねえ、九十九一」

九十九「ん、何だい?今更命乞い(いのちごい)かい?」

小夜「いいえ。自己紹介がまだだったわね……私は」

雨羅「あたしは」

小夜「あなたを殺す、殺し屋よ」(バットケースから日本刀を取り出す)

雨羅「おまえを殺す、殺し屋だ」(隠していたナイフを出す)

小夜「あなたが男であろうと、女であろうと」

雨羅「おまえが子どもであろうと、老人であろうと」

小夜「あなたが大金持ちであろうと、貧乏人であろうと」

雨羅「おまえが善人であろうと、悪人であろうと」

小夜「あなたを殺してと希う(こいねがう)人がいれば」

雨羅「お前を殺してと切願う(せつねがう)人がいれば」

小夜「十万億土(じゅうまんおくど)の地の果てであろうと」

雨羅「地獄の底のその更に底であろうと」

小夜「必ず」

雨羅「必ず」

小夜「あなたを殺す、私の名は」

雨羅「お前を殺す、あたしの名は」

小夜「四辻小夜」

雨羅「六月一日宮雨羅」

小夜「忘れてもらって構わないわ」

雨羅「覚えなくて構わねぇ」

小夜「どうせ」

雨羅「どうせ」

小夜「あなたは私に殺される」

雨羅「お前はあたしに殺される」

小夜「サービスよ?恨み言の一つや二つ、聞いてあげる」

雨羅「せいぜい無様に(ぶざまに)命乞いでもするんだな」

九十九「あー……聞いたことがある。「切断シスターズ」だったか?クックック……フミも懲りない(こりない)ね……まあ、頑張り給え。私の首は、ここだぞ?」

 

音響、館が大きく軋む音。

雨羅、小夜、ノエル、仁科、バランスを崩す。

 

九十九「クックック……卑しい(いやしい)奴め。タミコ、好きにしろ」

 

音響、館中に響く女の声。

大道具、中央扉が急に閉まる。

 

仁科「今度は何だよっ!」

ノエル「えっと、やっぱり、これ、ゲームだよ!ひ、人が本当に死ぬ訳が……」

九十九「では、私はこれで」(下手へハケる。市ヶ谷、慌てて九十九の後を追い、ハケる)

雨羅「どうする?」

小夜「追う」(下手へハケる)

雨羅「賛成。(仁科、ノエルに向かって)ほら、置いてくぞ?」(そのまま、下手へハケる)

仁科「!ちょ、ちょっと待ってくれ!」

ノエル「いや!置いてかないでっ!」

 

仁科、ノエル、慌てて下手へハケる。

 

音響、女の悲痛な声(フェードアウト)。

 

③、(回想)皮剥の館。

 

照明、全体を青く。

文月、下手から舞台中央へ。

 

文月「民子?!どこ、どこに行ったの!?民子!!」(切羽詰まった様子で、うろうろする)

 

文月、その場に座り込む。

九十九、上手から文月の近くへ。

 

九十九「やあ、フミ。私のフミ。どうしたんだい?」

文月「……民子をどこに連れて行ったの?」

九十九「タミコ?タミコがどうしたんだい?」

文月「返して。民子を返してっ!」(九十九に縋り付く(すがりつく))

九十九「返して?人聞きの悪い。いつ、私がフミからタミコを取り上げたいんだい?仲睦まじい(なかむつまじい)二人の邪魔(じゃま)を私がする訳ないだろう?」

文月「嘘つき!白々しいこと言わないでっ!返して、お願い、民子を返してよぉ!」

 

九十九、冷たく文月を振り払う。

大道具、中央扉を開く。

 

九十九「全く、度し難い(どしがたい)……少し手心(てごころ)を加えたら、すぐに付け上がる(つけあがる)。私も反省しなければな……ああ、タミコかい?タミコなら、そこにいるよ」(死体の山を指差す)

 

文月、指を指された方向を見る。

照明、全体を赤く。

 

文月「民子……?あ、ああ、あああああ!民子っ!どうして!?返事をして、お願い!嫌よ、私を一人にしないでっ!民子!民子……」

九十九「タミコは喜んで毒を飲んだよ。フミの心を掻き乱した(かきみだした)罪を背負って、ね。タミコの良い点だ。美しいだろ?私も悲しいよ。もう少し私の意を汲んで(くんで)くれたら、こんなことにはならなかったのに……」

 

九十九、文月を一瞥した後、上手へハケる。

照明、全体を青くした後、文月にスポットライト。

 

※歌3(文月)

 

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かごめ、かごめ、籠(かご)の中の鳥はいついつ出やる

夜明けの晩に亀と鶴が滑った

後ろの正面、だあれ?

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文月「民子、ごめんなさい。私が弱いせいで。私がバカなせいで……ごめんなさい、民子、ごめんなさい……」

 

文月、上手へのろのろとハケる。