鋭い___
と考えて、止まる。
ひょっこりと私の内から出てきた言葉は、しかし意味を成さない。
鋭い___
はて、私は何故、この単語を思い浮かべたのか?
何かを思い出していた訳でもなく、不意に出てきた。
鋭い___
自然と出てきたので、何かその次の言葉が出てくるだろう。
そう考えて、じっくりと他の単語を繋ごうとしてみた。
鋭い___
しかし、どれだけ次の言葉を繋げてみようとしても、しっくり来ない。
音にして4文字、それから先が続かない。
鋭い___
もしや、これで終わりなのか?
何度も首を傾げ、繋げようと躍起になった。
鋭い___
しかし、やはり、他の言葉は出てこない。
これで打ち切り、他はない。
鋭い___
一体、これは何の現れなのだろうか?
別の角度から考えてもみた。
鋭い___
だが、他の言葉がない故に、ただそれのみでしかない。
これ以上も、これ以下もない。
鋭い。
これで良い。
このままで良い。
自分のことながら、不可思議な体験をした。
たった一単語、それだけ外へ出てきた。
後年、そういうことだったのか、と納得できる日は来るだろうか?
投げ捨てられた一単語、拾う日までさようなら。