ある晩、生姜焼きと白米をもそもそと食べた。
そこそこ腹も満たし、お茶をぐいっと飲み干す。
不意に「何か甘いものが食べたいな」と呟いた。
すると、座っていた母が言った。
「冷蔵庫にプリンが2つあるから、2つとも食べて」
何と言うことだろう、プリンが2つも食べられる!
私は「え、2つも食べて良いの?」と聞き返した。
母は「2つとも食べて良いよ」と再度伝えてくれた。
私はいそいそと冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫の中には手のひらサイズのガラスのカップが2つあった。
そのカップの中には、黄色いプリンと濃い茶色のカラメルが入っていた。
母謹製の手作りであろうそのプリンを2つ失敬する。
スプーンを1匙も手に取って、自室まで戻る。
机にプリンを2つ左右対照に並べ、少し悦に浸る。
まずは右のプリンをひと掬い、下にするりと乗せる。
甘い、少し苦い、喉をつるりと通り過ぎる。
後はバグバグと食べる。
ものの数分で2つぺろりと平らげた。
実に美味であった。
今日は嬉しい誤算であった。
夕食の後にデザート、実にファンタスティックであった。
次もありますように、と食い意地ばかりのお願いを母の寝室に向かって祈る。