その7、ラスト。
7、とあるボロアパート、三度。
チャチャッチャ、とリズミカルな音。
深志 書かなければ……書かなければ……
ピンポーン、インター音が鳴り響く。
深志、机に向かって唸っている。
ピンポーン、ピンポーン、とインター音が鳴る。
深志 書かなければ……書かなければ……
ドンドンドン、扉を激しく叩く。
深志、ビクッとする。
顕太郎 先生?ご在宅でしょうか?嘘鳥先生?
ピンポーン、ピンポーン、ドンドンドン
深志、頭を抱える。
カチ、と鍵が開き、ギイーと玄関の扉が開く。
顕太郎、暮土、部屋に入ってくる。
顕太郎 あ、やっぱ居留守使ってましたか……おはようございます、 嘘鳥先生
深志 か、勝手に入ってぇ、来るな!
顕太郎 いや、先生が部屋に通してくれないからじゃないですか?
深志 ぷ、プライバシーの侵害だ!い、今直ぐに、でで出てってくれ!
顕太郎 そういう訳にもいきませんよ……全く……原稿、書けましたか?
深志、狼狽える。
顕太郎 原稿は書けましたか?
深志 い、今、構想を練っているところだ……
顕太郎 なるほど?その構想はどの程度までできましたか?
深志 お、お前に言っても、分からないだろうが、物語というのは……
顕太郎 原稿は、書けましたか?イエスか、ノーでお答えください
深志 か、そ、う……の、の、ノーだ……
顕太郎 そうですか。まあ、そうでしょうね。分かりました
深志 よし、か、帰ってくれ、か帰ってくれ
顕太郎 先生、最後通告です
深志 へ?
顕太郎 次、締め切りを1月先とします
深志 おお!
顕太郎 その締め切りまでに書き上げて下さい
深志 分かった、分かりました、よ、よし……!
顕太郎 もし。もし、1月後の締め切りまでに書けていなかったら……
深志 ……か、書けていなかったら……?
顕太郎 嘘鳥先生には死んでもらいます
深志 へ?
顕太郎 では、よろしくお願いします
深志 ま・た・か!また、そのパターンか!よ、よろしくじゃないよ!
顕太郎 まあ、大丈夫ですよ、書いてくれたら?え、書いてくれますよね?
深志 く、暮土くん!君からも言ってやってくれ!そ、そういう方法は、 どうかなって?
暮土 お金
深志 へ?
暮土 もう、お金もらっちゃったんですよね
深志 く、暮土くん?!
顕太郎 では、次回作、期待してますので
深志 ぐうう、あああ、このー……だああ!
深志、財布を探し出して立つ。
顕太郎 先生?どちらへ?
深志 原稿用紙を買いに行く!もおお!
暮土 今日は何食べます?
深志 肉!
暮土 あ、じゃあ、次いでにキャベツとかも買って来てください
深志 分かったよ!もう!20万部、売ったのに!どうして、さ!もう!
深志、玄関から出る
顕太郎、暮土と顔を見合わせ、肩をすくめ、そのまま帰る。
ピロン、と連絡音。
暮土、端末を見て、電話をかけ始める。
暮土 おはようございます。社長、何か御用ですか……はい、はい……( 電話をしながら玄関へ)
メトバ姫、キラキラ、くるくる回って出てくる。
メトバ姫 フーフーフーン♪フーフフーン♪フーフーフーン♪フフフフーン♪ フフフフーン♪フフフフーン♪……フフフ、カミサマ、可哀想に。 でも、逃げないでねカミサマ。あ、逃げられないか。だって、 カミサマは作る人だものね♡フフフ……(客席の人たちに気付く) あ、本日はご来場頂き、ありがとうございます。これにて、「 ストーリーテラー・ストーリー」は!終わりです! 先生の次回作に!乞うご期待!ください!
メトバ姫、華麗に一礼し、キラキラ、くるくる、 楽しげに回り始める。
了。