その6。
こういう体験してみたい（ただの願望）…。
6、とある書店。
ジャンジャンジャン、と晴れやかな音。
暮土、ジャケットを持って来て、深志に手渡す。
深志、ジャケットを着る。
メトバ姫、アナウンサーになる。
カエル王子、顕太郎になる。
暮土、そっと隅の方へ。
アナウンサー、深志の近くへピョンと行く。
アナウンサー さあ！今話題の本、20万部の大ベストセラーとなった「 メトバ姫、嵐のランデブー」の作者、 嘘鳥先生にインタビューしてみたいと思います！こんにちは！
深志 こ、こ、こ、こんにちは
アナウンサー 今回の本、メトバ姫シリーズとして第4作ですが、 この異例のヒット、どう思いますか？
深志 び、び、びっく、びっくり、しました。まさ、まさか、 こんなに売れるとは……夢にも……
アナウンサー 今作、「メトバ姫の初恋」 で登場したサナーダ少尉との愛の逃避行がメインにマーツモの国、 ナガーノ帝国、ウェダー共和国、 更にはスワッコの民も巻き込んだ一大スペクタルとなっていますが 、当初からこの構想はあったのですか？
深志 い、いや、当初は、サナーダ少尉とは……あ、あ、何でも、 何でもありません……えっと、そうですね、ありました。はい
アナウンサー なるほどー！私、メトバ姫シリーズのファンで！ ずっと新刊が出るのを待ち遠しく待っていたんですよー！
深志 あ、あ、そう、なんですね？あ、その、あ、済みません、長らく、 お待たせしまして……
アナウンサー いえいえ！待った甲斐がありました。まあ、 古参ファンとしては今回のフィーバーはちょっと複雑な気持ちもあるのですけど……
深志 え、あ、え？
アナウンサー んん！今後の展開はどうなっちゃいますかね？
深志 ……そう、ですね……それは、お楽しみに
アナウンサー 焦らしますねー！では楽しみに待ちます！今日はこの後、 サイン会があります！14時から井上百貨店にて！ ファン必見ですよ！
深志 ふぁ？！え、こ、こ、こ、な、な、生？え？
アナウンサー スタジオに返しまーす！……はい、ありがとうございました！
深志 え？だい、大丈夫？これ、ほ、ほ、放送事故じゃ……
アナウンサー んん！では、私はこれで！あ、後でサイン本、ください！
アナウンサー、ささっとハケる。
顕太郎、呆れながら深志の元へ。
顕太郎 全く、物好きがいるものですね
深志 お、おう……いや、物好きっていうのは、どう、どうなんだ？
顕太郎 サイン会まで時間がありませんから、 今のうちにトイレを済ませてくださいね？
深志 ちょ、あの、はい……
顕太郎、席を外す。
深志、机の前に座る。
深志 はー、書いた。書いたぞ……メトバ姫、あいつ、 こうなること見越してサナーダとのこと激押ししたのか……？ まあ、いいや、書けたし……あー、次、次か……次？次……ペン。 そう、ペンは、あ、ある。書かなくちゃ……書かなければ……
