鳥を取っ掛かりに考えます。
今年は2017年、干支は酉年だ。
はて酉年の「鳥」とは何の鳥を指しているのだろうか?
鳥の種類は何であるか些か気になる。
ニワトリかキジかトキか……
私はキジを推す。
ただ、竜が入るくらいだから鳥も朱雀など想像上の生物かもしれない。
さて、話は変わって。
酉年だから鳥にまつわる話でも書く。
すわ、私の鳥にまつわる昔話でも徒然思い出してみようか。
時は12年前の1月、18歳の私は長野市に訪れた。
長野市に来た目的は専門学校の受験面接のためだ。
衣服は学校指定の学ランに防寒具を上から着込んでいた。
学ランだったからいつもよりパリッとしていたような気がする。
長野駅に着いて、まず驚く。
ハトが長野駅前の広場に大挙して押し掛けていたのだ。
長野駅周辺の案内板の上にハト、噴水の周りにハト、足下にハト……ハトのオンパレードだ。
当時、善光寺の改修工事をしていてハトの憩いの場所が封鎖されたために長野駅前の広場に流れたのが原因だと考えられる。
時間は正午の辺り、面接にはまだ1時間以上の余裕があった。
私はコンビニエンスストアーでオニギリとハンバーガーとお茶を買った。
その足でバス乗り場の近くにあるベンチに腰掛けると、昼食にした。
もそもそとオニギリを食べている向こう側から数匹のハトが歩いているのが見える。
オニギリを食べ終えて、次にハンバーガーを食べ始めた。
すると、1羽のハトがするすると私の足下にやってきた。
お目当ては私の食べたパンの食べこぼし、ひょこひょこ来るハトを見て私はちょっと微笑ましい気持ちになった。
お互いに腹が減ったな、よしよしと機嫌良く眺めていた。
私がもそもそとハンバーガーを食べている最中、もう2羽近づいてきた。
やはり、お目当ては私の食べたパンの食べこぼし、よしよしお前らもかと温和な態度で接した。
そうして3羽、4羽と増えていき……気付いたら20羽ほどのハトが私の周りを埋め尽くしていた。
最初の遠慮は何処に行ったのだろうか? 少しの食べこぼしさえ激化した競争を繰り広げていた。
私の肩や腕にハトが止まる、私は止まり木じゃない。
あまつさえ私の手に持っているハンバーガーを直接狙ってきやがる。
ここまで来ると私も意固地になる。
ここから離れると言う選択肢をかなぐり捨てたのだ。
こうしてハトと私の戦争が始まった。
頭に乗るハトや膝に乗るハトは取りあえず無視した。
腕に乗るハト、私のハンバーガーを奪いにくる奴だけに意識を向けた。
腕を急に下に降ろしたり、ハンバーガーを持ち替えたりして防戦した。
腕に乗っているハトはその場で飛び立つと羽ばたきながらハンバーガーを持った手の周りに留まろうとしてきた。
ハンバーガーを八の字に振るとハトが追いかけるように我武者羅に左右に揺れて追い掛けてきた。
一人サーカス団の有様だな、と内心考えて食し続けた。
口の中のハンバーガーが飲み込めたら、すかさずハンバーガーを食らいつく。
どれくらいの時間が経ったのだろうか? 私は最後の一口を口に放り込んだ。
勝った! 私は勝ったのだ! と私は勝利を確信した。
そうして私の手元にあったハンバーガーがないことをハトたちが悟ると、彼らは離れていった。
それはもうサーッと。
20羽ほどいたハトが一斉に、引き潮の如く凄い早さで。
半ば呆然としている私の耳に笑い声が聞こえた。
ハッとなってその笑い声の方を見ると綺麗なお姉さん方がこちらを見ていた。
急に我に返った私は何事もなかったかのように振る舞いながら急いでその場を後にしたのだ。
こうして、ハトとの戦いは終結した。
このことから分かることがある。
あえて、言い切る。
意固地になって戦いに勝っても虚しいだけ。
本当に冷徹な奴らです。
戦いが終わったら1羽くらい私に懐いてくれても良いではないか?
などと宣ってもやはり初手で間違えていた。
安心安全な場所取りは大事だ。
皆さんも安全に食事ができますよう心配りを。