ネガティブ方向にポジティブ!

このブログは詰まらないことを延々と書いているブログです。

『小雨』

詩を書きます。

 

『小雨』

 

小雨が降る。

 

雨粒が川に降り注ぐ。

降り注いだ雨粒が水泡になる。

水泡が苔の蒸した石に張り付く。

苔の蒸した石に張り付いた水泡が鱗になる。

薄い銀色の光を携えながら苔の蒸した石は一匹の魚になる。

 

一匹の魚は川を下る。

冷たい川の流れに任せて。

一匹の魚は海へ出る。

 

一匹の魚は遠くを目指した。

石であった頃、変わらない景色から。

石であった頃、空想した景色へ。

一匹の魚は遠く遠くを目指した。

 

嵐にあった。

鯨に会った。

虹を見た。

船を見た。

木が流れていた。

プラスチックが流れていた。

 

一匹の魚は遠くへ来た。

美しかった鱗は剥がれ落ち、水泡になった。

一匹の魚は苔の蒸した石になった。

深い深い海の底へゆっくりと落ちる。

 

やがて、底らしい場所に着いた。

苔の蒸した石は暗い海の底にいた。

苔の蒸した石はぶくぶくと泡立った。

泡立った苔の蒸した石は、天へと上った。

 

幾数年の月日が流れ。

苔の蒸した石は小雨となった。

苔の蒸した石のいた懐かしい川へ。

 

そうして、小雨がまた降る。