ネガティブ方向にポジティブ!

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4月の挑戦、オフィーリアの考える。

4月にオフィーリアを題材にした一人芝居を撮影する。

当初は冬にするつもりでいたのだが、私の気分と日程ミスで1年ほど放置していた。

河原で撮影するつもりだが、借りられなさそうなら部屋でも借りて結構する。

 

オフィーリアはウィリアム・シェイクスピア戯曲『ハムレット』に登場するヒロインで、ハムレットとは恋仲にある。

 

デンマークの王子ハムレットは苦悩していた。

父である国王が急死したために、父の弟である叔父が王に即位した。

更に亡くなった王の妻、ハムレットの母と叔父が結婚した。

後日、ハムレットは亡霊となった王から「私は弟(叔父)に毒で殺された。王位と妻を簒奪された」と伝えてくる。

事実を知ったハムレットは叔父に復讐することを父王に誓う。

 

ハムレットが復讐するために狂人の振りをした。

狂った振りをすれば周囲は油断し、気の弛みから叔父は正体を暴露させようと目論んだ。

しかし、ハムレットの心積もりを知らないオフィーリアはハムレットの変貌に驚き、戸惑う。

宰相ボローニアス、オフィーリアの父はハムレットの狂気はオフィーリアへの恋煩いによるものと予測し、ハムレットから距離を取るようオフィーリアに告げる。

 

その後、劇団に「王が毒殺される」様子を叔父王に見せ、ハムレットは母と会話する。

隠れて盗み聞きしていたボローニアスを叔父王と勘違いし、刺し殺す。

復讐に燃える恋人には「修道院に行け」と無碍に扱われ、父は殺されたオフィーリアは悲しみのあまり正気を失う。

 

オフィーリアは歌を歌ったり、取り留めのないことを口にしたりして悲しみから逃れようとする。

兄のレアティーズを見ても兄と気付けずほどに幼く振る舞う。

そして、編んだ花輪を細い枝にかけようとして川に落ちる。

事態を受け止められないオフィーリアは歌を歌いながら浮かび続け、やがて衣服は水を吸い込み、深く沈み、溺れて死んでしまう。

 

最初、現代人の価値観である私は「恋人が狂った程度で狂えるか?」と感じた。

父の死や恋人の狂人への変貌に悲しむのは分かるが、それで狂うのは分からなかった。

何故、オフィーリアは狂ってしまったのだろうか?

 

私の中の答えとして、オフィーリアの生きている世界はとても小さいものだったのだろう。

劇中でも会話しているのは兄や父、そしてハムレットくらいだ。

部屋で編み物をして過ごしていて、ハムレットの様子がおかしいと真っ先に報告したのは父だ。

狂った後も一人で河原近くで花輪を編んでいる。

仲の良い女中や友達がいれば、一人で花輪を編むようなことにはならなかったはずだ。

 

オフィーリアの世界は恋人と家族、その中で完結していたのだろう。

だから、慕っていたハムレットの変貌は彼女の小さな世界にとっては重大だったのだろう。

増しては「修道院に行け!」は貞淑こそ美徳としているオフィーリアには足下から崩れ落ちるほどの衝撃があったのだろう。

そこに父の死が、しかも殺されたと聞かされたら、オフィーリアには受け止め切れなかった。

 

故に、辛い現実から逃れようと現実と自分を遮断したのだ。

 

オフィーリアに必要だったのは彼女に寄り添ってくれる相手で、『ハムレット』で言えば兄なのだが、間が悪いことに兄はフランスに留学してオフィーリアの近くにいなかった。

もし、兄が近くにいて一緒に悲しんだり憤ってくれたならば、彼女は狂うこともなかったかもしれない。

ハムレットがオフィーリアを信じて胸の内を打ち明けられたら、違った結末になっていたかもしれない。

小さな世界から出ることができなかった、オフィーリアが狂った理由を私はそう考えた。

 

これを私は十二分に表現できるかは未知数だ。

彼女の心情を想像するが、私にはオフィーリアの悲しみは遠く及ばない。

歌を歌い、取り留めのないことを口ずさみ、現実を見えなくなるほどの悲しみとはどういったものだろうか?

兄を視認できず、川へ沈むのに気付かずほどの狂いとはどういったものだろうか?

彼女の悲しみは、痛みは、どうしたら良かったのだろうか?

 

そんなことを考えながら、向き合っていきたい。

私の中のオフィーリアを表現していく、そんな4月になるだろう。